プロゲステロンとは、妊娠の維持的役割
女性ホルモンは女性の身体に関係の深いホルモンです。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の二種類がありますが、今回はプロゲステロンがどのような作用のものなのか、検査や治療についてもご紹介していきます。
プロゲステロンとは
脳の下垂体から分泌される黄体形成ホルモンは、卵巣を刺激してプロゲステロンの分泌を促します。プロゲステロンは、月経周期や妊娠に大きく影響しています。月経周期には卵胞期、排卵期、黄体期と3つの期間があり、プロゲステロンの分泌量は期間によって変動します。
卵胞期の開始時点では、妊娠の可能性に備えて子宮内膜は水分と栄養をため込み厚くなっています。受精が起きなかった場合には、プロゲステロンの血中濃度は低くなります。その結果、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちて、月経の出血が起こります。卵胞期の後半になると、増加するエストロゲンの作用により、子宮は準備を整え始め、プロゲステロンに作用する黄体形成ホルモンの急激な上昇があります。この時点で卵胞期は終わり、次の期間のはじまりです。卵胞期は約13~14日続きます。
排卵期は、黄体形成ホルモンの刺激により、卵胞が卵巣から飛び出して卵子が放出されます。黄体形成ホルモンの血中濃度が急上昇して約10~12時間後に卵子が放出されて終わりです。卵子の放出は左右の卵巣でランダムに起こるとされています。片方の卵巣を病気などで摘出した場合でも、残った卵巣で毎月排卵が起こります。卵子が受精できる期間は、排卵後長くても12時間程度です。排卵期は16~32時間続きます。
黄体期は受精が起こらなければ、排卵後14日間ほど続きます。排卵が起きた卵胞が黄体となり、そこから多量のプロゲステロンが分泌されます。この作用により、受精卵が着床した場合に備えて子宮が準備をはじめます。プロゲステロンは子宮内膜の厚みを増やし、水分と栄養素を取り込みます。また、細菌が子宮内に侵入できないように、子宮頸部の粘液の粘度を高める働きもあります。黄体期には、プロゲステロンの作用によって体温が上昇し、月経がはじまるまで維持されます。基礎体温はこの体温の変動をみて、排卵が起こっているかどうかを調べることができるものです。受精が起こらなかった場合には、黄体は退化してプロゲステロンを分泌しなくなり、次の期間に移ります。受精卵が着床した場合には、胎児が成長して自らホルモンを分泌できるようになるまで、黄体からプロゲステロンの分泌が続きます。
プロゲステロンの検査
基礎体温を調べることでプロゲステロンが分泌されていることがわかりますが、採血や尿検査でプロゲステロン(P4)の分泌を調べることもできます。基準値は以下のようになっています。
卵胞期:0.3 以下
排卵期:5.7 以下
黄体期:2.1~24.2
閉経期:0.3 以下
※医療機関や検査方法によって基準が異なる場合もあります。
月経周期の卵胞期ではプロゲステロンの血中濃度は低く、排卵後黄体の形成に伴い急上昇します。妊娠が成立しない周期では黄体の退化により、血中濃度は下がり、月経のはじまりです。妊娠が成立すると黄体は妊娠黄体となり、プロゲステロンの血中濃度は高値のまま維持され、妊娠10週前後で胎盤に移行します。閉経期には、プロゲステロンの値は低値となります。
プロゲステロンを調べる検査は、身体が妊娠可能な状態である時期を調べる方法として用います。プロゲステロンが十分に分泌されていないと、黄体機能不全といった不妊の原因にもなるからです。検査値が高値の場合には、先天性副腎過形成、Cushing 症候群などが考えられ、低値の場合には、Addison 病、間脳・下垂体機能不全、卵巣機能不全、無月経、無排卵の可能性があります。検査結果については、担当の医師とよく相談しましょう。
無月経、月経周期異常、月経困難症、機能性子宮出血、不妊症などの治療でプロゲステロン製剤(黄体ホルモン製剤)を投与することがあります。プロゲステロンを補充することで、女性ホルモンのバランスを整え、月経周期の改善、切迫流早産、月経困難症の症状の改善にも使用する場合もあります。また、副作用としては、吐き気や食欲不振などの消化器症状、めまい、頭痛などの精神神経系症状が考えられます。プロゲステロン製剤は応用範囲が広く、頻繁に用いられている薬剤ですが、最近では副作用の少ないものも登場しています。薬の種類には、坐薬から内服薬、注射薬まであり、担当の医師とよく相談の上、治療方法を検討してください。
参考URL
MSDマニュアル家庭版 月経周期
日経メディカル 処方薬事典
FALCO 臨床検査案内サイト プロゲステロン
MedicalNote ホルモン検査とは―婦人科の重要な検査