更年期とは?更年期の悩みや症状の解決方法
更年期には、さまざまな症状や変化が起こります。女性の健康や人生に大きく影響を与えるものもあります。更年期の悩みや疑問、症状の解決方法について詳しく見てみましょう。
女性の一生と更年期
女性の平均寿命は、2019年の調査で87歳を超えています。約90年間の女性の一生のうち、女性ホルモンとの付き合いは約40年間です。女性ホルモンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。この2つのホルモンの変化が、月経周期や妊娠・出産など、女性のからだや人生に大きな影響を与えます。そして、この女性ホルモンとの付き合いが終わり、訪れるのが閉経です。この閉経の前後に心身の変調が起こりやすくなり、この時期が更年期になります。
閉経について
閉経とは、加齢に伴って卵巣の活動性が次第に低下した後、月経が永久に停止した状態をいいます。日本人の平均閉経年齢は約50歳です。閉経時期には個人差があり、40代で閉経を迎える方もいれば、60代で迎える方もいます。
更年期について
更年期とは、卵巣の機能低下に伴って女性ホルモンの分泌量が減少していく時期で、閉経を迎える前後5年間のことをいいます。45~55歳ぐらいが一般的に更年期と呼ばれる時期です。
更年期の身体の変化
更年期には、女性ホルモンのひとつである、エストロゲンというホルモンの分泌が低下します。それにより、下記のような変化が起こります。
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- 脳(視床下部)が混乱し、からだのオンオフを司る「自律神経」のコントロールが乱れる
- 血管の収縮・拡張作用や、心の健康維持にも大きく影響する「セロトニン」が減少する
- 脳の記憶中枢(海馬)の神経細胞の死滅が抑えられなくなる
- 肌のハリやうるおいを守れず、肌トラブルが増加する
これらの変化に伴い、肩こり・腰痛、疲れやすさ、頭痛、めまい、イライラなど、さまざまな更年期症状があらわれます。特に症状が重く、日常生活に支障をきたすものは更年期障害と呼ばれ、適切なケアを受けることが必要です。
更年期付近から注意したい病気
更年期には、さまざまな症状が出るだけでなく、下記のような病気になる可能性が高くなります。特に閉経後には、その危険性が高まります。
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- 脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が大幅に増えてしまう状態や、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減ってしまう状態です。血管の壁を厚くして動脈硬化の要因となったり、生活習慣病の引き金となります。
動脈硬化とは、血管の壁に脂肪などのかたまり(プラーク)が蓄積していき、血管が硬く狭くなった状態です。この状態が進行し、血流がわるくなったり、血管が詰まったりした状態が動脈硬化性疾患です。狭心症や心筋梗塞、脳卒中、大動脈瘤などがあり、どれも命に関わる可能性が高い病気になります。 -
- 骨粗しょう症
骨粗しょう症(こつそしょうしょう)とは、骨のカルシウム量が減少し、骨の中がスカスカになった状態です。尻もちをついて背骨を圧迫骨折したり、転んだときに手をついて手首を骨折したりと、今までは軽いケガで済んでいたことでも骨折するようになります。
- 糖尿病予備軍
糖尿病にはなっていないものの、血糖値が高めの状態になるのが糖尿病予備軍です。この状態が続くと、糖尿病になる可能性があるだけでなく、増えすぎた糖が血管を痛める要因となり、動脈硬化を進行させるリスクがあります。
- 認知機能低下
認知機能とは、記憶力や判断力、理解力、計算力、言語理解能力などの総称で、この能力が低下することを認知機能低下といいます。思考がまとまらない、思い出せない、覚えられない、釣り銭のミスが増えるなどが挙げられます。
- 子宮脱
通常、子宮は骨盤の中に納まっていますが、子宮が下がって膣口から外に出た状態が子宮脱です。子宮は骨盤的筋群と呼ばれるネットで支えられた状態ですが、出産や加齢によってネットが緩むと、子宮脱が起こりやすくなります。
- 萎縮性膣炎
膣や外陰部が乾燥・萎縮し、雑菌が繁殖しやすくなった状態です。膣や外陰部の乾燥感、ヒリヒリ感、痛み、かゆみ、少量の出血、おりものの増加・においが気になる、性交時の痛みなどが症状として挙げられます。
更年期症状・更年期障害の解決方法
更年期にはさまざまな症状がありますが、どの症状もエストロゲンの低下が大きな原因であるところは同じです。エストロゲンを補うのに有効なケア方法をみてみましょう。
病院で受けられるケア
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- ホルモン補充療法(HRT)
貼り薬や飲み薬、塗り薬で女性ホルモンを補う治療法です。エストロゲンが低下することで生じる、更年期症状を緩和するだけでなく、骨粗しょう症や動脈硬化など更年期以降に発症しやすい病気を予防する効果があります。
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- 漢方療法
その人の体質や症状に合わせた漢方を内服することで、体質や症状の改善に効果が期待できる治療法です。重篤な副作用が少なく、さまざまな更年期の不調を改善・緩和する効果が期待できます。
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- 向精神薬
心の状態が落ち着く薬を内服し、心とからだを休める治療法です。抑うつ、うつ状態、不安、神経質、不眠、だるさ、頭痛・頭重感などの症状が強く、ホルモン補充療法などでもあまり改善がみられない場合に使われることがあります。
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- カウンセリング
ストレスや不安による心の健康状態の悪化は、更年期の症状がひどくなる一因となります。「話を聞いてもらったら楽になった」という経験がある方も多いと思いますが、悩みや苦しさを医師やカウンセラーに話すことも大切な治療法です。
自分でできるケア
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- 食生活を見直す(HRT)
三食きちんと食べることが大切です。魚や乳製品、大豆製品(豆腐や納豆など)など、カルシウムとイソフラボンの多く含まれる食品を意識して摂るようにしましょう。
また、肉の脂身やバター、生クリームなどの動物性脂肪は控え、食物繊維の多い野菜やきのこを摂ることで、脂質異常症や動脈硬化などの予防に繋がります。摂りにくい栄養素は、サプリメントで補うのもいいですね。
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- 運動習慣をつける
からだを動かし、全身の筋肉をほぐすことで、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。ストレッチやウォーキングなど、無理のないところから始めてみましょう。
また、骨盤底筋体操は、子宮脱や尿漏れの予防に効果的です。
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- 温活
昔から「冷えは万病のもと」といわれるように、冷えは体の不調を引き起こす原因になります。
病気にならない体づくりのため、日々の食事や運動を行うなど生活習慣を通して意識的に体を温め、平熱を上げる活動に取り組みましょう。
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- 禁煙する
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、更年期症状やがんをはじめ脳卒中などの循環器疾患、歯周病など多くの病気と関係しています。
そのため、喫煙者は禁煙することが勧められます。受動喫煙(タバコの煙や禁煙者が吐き出す煙を吸うこと)も同様です。2006年4月から、禁煙治療が保険適応で受けられるようになっていますので、ぜひ禁煙治療を行っている病院やクリニックを受診してみましょう。
更年期は早めの対処で乗り切る
更年期にはさまざまな症状や不調が起こりやすくなり、閉経すれば、さまざまな病気を発症するリスクがぐっと上がります。
そのため、できるだけ早く生活習慣を見直し、症状が強い場合には病院で適切なケアを受けることが大切です。また、万が一のリスクや医療費の心配のない老後を迎えるために、最適な保障内容の医療保険を準備しておくとよいでしょう。
参考文献
女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方 天野恵子 40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」 小山嵩夫
参考URL
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco-summaries/t-02
厚生労働省主な年齢の平均余命
www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/dl/life19-02.pdf
厚生労働省禁煙治療ってどんなもの?
www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-007.html
日本産科婦人科学会更年期障害
www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14#:~:text=%E3%80%8C%E9%96%89%E7%B5%8C%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E5%8D%B5%E5%B7%A3,%E3%81%AB%E9%96%89%E7%B5%8C%E3%82%92%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
日本動脈硬化学会動脈硬化性疾患とは?
www.j-athero.org/general/2_atherosclerosis.html
大東製薬工業株式会社萎縮性膣炎・老人性膣炎とは
www.daito-p.co.jp/female/atrophic_vaginitis.html