女性ホルモンの適正バランスとは?
更年期に注意すべきこと

更年期とは
20/12/20
女性ホルモンの適正バランスとは?<br />更年期に注意すべきこと

女性のからだは、女性ホルモンの影響を大きく受けています。
女性ホルモンの働きによって、月経が起こり、妊娠・出産ができ、さまざまな形で女性の健康を守ってくれています。
そんな女性ホルモンのバランスが乱れるのが、更年期です。女性ホルモンと更年期の関係について、疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
女性ホルモンの変化や更年期に注意すべきことなど、詳しい情報をご紹介します。

女性ホルモンは2つある

女性ホルモンには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つがあります。この2つの女性ホルモンについて、それぞれ働きをみてみましょう。

エストロゲン

エストロゲンは、卵巣内で「卵胞(卵子の元)」が発育するとともに分泌されるホルモンで、卵胞ホルモンとも呼ばれます。
働きとしては下記のように、子宮や卵巣などの生殖器官への作用と全身への作用に分かれます。

  エストロゲンの作用内容
生殖器官
  • 卵子を成熟させて排卵を促す
  • 子宮内膜を厚くして妊娠に適した環境にする
  • 妊娠や出産に適した女性らしい体つきにする(第二次性徴)
全身
  • 皮膚のうるおいを保つ
  • 骨を強く保つ
  • 血管壁をゆるめる
  • コレステロールを減らす
  • 認知機能を維持する

プロゲステロン

プロゲステロンは、排卵後に残った卵胞の細胞が変化した「黄体」から分泌されるホルモンで、黄体ホルモンとも呼ばれます。
働きとしては、子宮内膜をふかふかにしたり、基礎体温を高くしたりするなど、妊娠が継続しやすい環境にからだを整える働きがあります。 この2つの女性ホルモンの増減によって、女性の心身の健康が保たれています。

女性ホルモンのバランスをとる場所

女性ホルモンは、卵巣から分泌されますが、そのバランスを調節しているのが脳の「視床下部」という場所です。
脳の視床下部が、女性ホルモンの分泌状況をキャッチし、その下にある脳下垂体に卵巣への指令(ホルモン)を出すよう伝えます。
下垂体は卵巣に向けて、卵胞の発育を促すホルモン(FSH:卵胞刺激ホルモン)や発育した卵胞の排卵を促すホルモン(LH:黄体形成ホルモン)を送り、女性ホルモンのバランスを調節しています。
女性の体内では、脳と卵巣で下記のような連携が周期的におこっています。

卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵胞を刺激してエストロゲンの分泌を増やします

排卵日が近づくと、卵巣内で成熟した卵胞によってエストロゲンの濃度が急激に上昇します

視床下部がそれをキャッチし、下垂体に排卵の準備ができたことを伝えます

下垂体が黄体形成ホルモン(LH)の分泌を急激に増やします(LHサージといいます)

LHサージを受けて、卵巣で排卵が起こります

卵巣内で、排卵後に残った卵胞が黄体になると、プロゲステロンが分泌されます

排卵して受精が起こればエストロゲン・プロゲステロンの分泌は続き、妊娠が継続できるよう作用します受精が起こらなければ、女性ホルモンの分泌が低下し、月経がおこります

このように脳と卵巣の連携によって、女性ホルモンが適正なバランスに保たれ、月経周期や妊娠などの女性の性機能が守られています。そして、この連携が崩れるのが更年期です。

脳と卵巣の連携が取れなくなる更年期

女性は年齢を重ねると、卵巣の活動性が次第に低下します。30代頃から少しずつ卵巣の老化が始まり、40代頃には卵巣の機能の低下が著明になり、女性ホルモンの分泌が低下するようになります。これによりおこるのが、下記のような状態です。

エストロゲンの分泌が低下し、脳の視床下部は卵巣へエストロゲンを増やすように指令を送ります

最初のうちは、その指令に応えようと卵巣は頑張りますが、加齢によって卵巣の力がさらに衰えると、エストロゲンの分泌が急激に低下していきます

視床下部は、指令を送ってもエストロゲンが増えず、卵巣が応えてくれなったことに混乱し始めます

この混乱が原因となり、月経不順や自律神経の失調など、さまざまな更年期症状が引き起こされます。

女性ホルモンの低下が更年期症状を招く

エストロゲンが低下することで、下記のような変化が起こります。

脳の視床下部が混乱し、自律神経のコントロールが乱れる

エストロゲンの急激な低下によって視床下部が混乱すると、同じ視床下部でコントロールされている「自律神経」のコントロールが乱れます。それにより、下記のような更年期症状がみられる場合があります。

    • 肩こり、腰痛
    • 疲れやすい
    • 頭痛
    • めまい
    • ほてり、のぼせなど

     

    血管の収縮・拡張作用があり、心の健康維持にも大きく影響する「セロトニン」が減少する

    エストロゲンの分泌が減少すると、セロトニンも減少します。セロトニンが減少すると、頭痛や、憂うつな気分になる、くよくよする、やる気の低下、気分の落ち込みなどの抑うつが起きやすいです。
    また、セロトニンの減少は「ノルアドレナリン」や「ドーパミン」などの神経伝達物質の分泌量を調節する働きにも影響を及ぼし、感情のコントロールがうまくいかずイライラしやすくなります。

    脳の海馬の神経細胞の死滅が抑えられなくなる

    エストロゲンは、脳の「海馬」の神経細胞を守る働きがあります。海馬は記憶の中枢です。エストロゲンの分泌低下により海馬の神経細胞が死滅すると、下記のような記憶力の低下に伴う症状が起こりやすくなります。

    • 人や物の名前がパッと出ない
    • 物覚えが悪くなる
    • 忘れ物が増える
    • 向かった先でなにをしに来たのかわからなくなる

     

    肌の張りやうるおいを守れず、肌トラブルが増える

    子宮や卵巣などの生殖器以外で、エストロゲンの作用が大きく働いているのが皮膚です。
    皮膚のハリやうるおいはエストロゲンが守っています。そのため、エストロゲンが低下すると皮膚が乾燥したり、シワやシミ、たるみが増えたりするなど、女性にとって嬉しくない状態になります。
    また、乾燥からかゆみがおこることも少なくありません。

    女性ホルモンの適正バランスを取るために必要なこと

    更年期には、女性ホルモンのバランスが乱れ、更年期症状があらわれます。
    女性ホルモンを20代の状態に戻すことは難しいですが、現状でできる最も良いバランスに導くことで、更年期症状の緩和や改善に繋がるでしょう。そのためには、生活習慣を見直すことが必要になります。

    早寝早起きを心がける

    朝起きたら日光を浴びて体内時計をリセットしましょう。日光を浴びることで、セロトニンが増え、カルシウムの吸収に必要なビタミンDが産生されます。

    食事は三食きちんととる

    栄養バランスが整ったメニューで、特に納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品を積極的に取り入れましょう。
    大豆製品には、大豆イソフラボンが多く含まれており、エストロゲンに似た働きをしてくれます。また、大豆イソフラボンから作られる「エクオール」という物質が、エストロゲンに似た作用を強めてくれることがわかっており、サプリメントなども販売されています。
    エクオールを体内で産生できる人もいますが、日本人では約半数の方が産生できません。エクオールが産生できるか否かは、簡単な検査キットで調べられます。

    運動習慣を続ける

    運動によってからだを動かし、全身の筋肉をほぐすことは、ホルモンバランスを整えるのに効果的です。
    ストレッチやウォーキング、サイクリングなどの有酸素運動を、無理のないところから始めてみましょう。

    睡眠をしっかりとる

    ホルモンバランスを整えるには、睡眠を十分とることが大切です。午後から夕方に有酸素運動を行う、就寝する1時間以上前にゆったり湯舟に浸かって入浴するなど、体温を上げることで良質な睡眠をとりやすくなります。

    禁煙する

    タバコは、血管を収縮させたり、エストロゲンの働きを弱めたりする効果があります。
    そのため、更年期症状や病気を促進させるおそれがあり、禁煙することが望ましいです。2006年4月より、禁煙治療が保険適応で受けられるようになっていますので、ぜひ禁煙治療を受けてみましょう。

    更年期は病気のリスクへの備えも大切

    更年期には、エストロゲンの低下や、脳と卵巣の連携がうまく取れなくなることで、さまざまな更年期症状があらわれます。
    さらに、更年期以降には脂質異常症や骨粗しょう症、糖尿病予備軍、動脈硬化などが起きやすく、病気のリスクが上がります。
    更年期に注意すべき病気やその治療費について知り、予防法を実践したり、もしものときに備えて必要な情報を得たりすることは大切なことです。ぜひ、更年期や病気のリスクについても知っておきましょう。

    参考文献

    女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方 天野恵子
    40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」小山嵩夫
    病気がみえる婦人科メディックメディア

    参考URL

    国際抗老化再生医療学会雑誌エストロゲンの機能とストレス~生涯を通じて健康を維持するために~

    厚生労働省禁煙治療ってどんなもの?

  • この記事を監修している先生


    小山嵩夫クリニック

    小山嵩夫先生

    小山嵩夫クリニック院長
    NPO法人「更年期と加齢のヘルスケア」理事長
    一般社団法人「日本サプリメント学会」理事長

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