更年期に多い「微小血管狭心症」
注意すべき心臓病とは?

更年期に注意すべき病気・治療費
20/12/13
更年期に多い「微小血管狭心症」<br />注意すべき心臓病とは?

更年期症状は非常に種類が豊富で、200~300種類あるといわれています。その中で「息切れ」「動悸」「胸部の違和感」「胸痛」「吐き気」などの症状が定期的に出る場合、「微小血管狭心症」という病気の可能性があることをご存じでしょうか?
どのような病気か、症状や予防法などについて詳しく解説します。

微小血管狭心症とは

心臓は全身に血液を送り、酸素や栄養を届けています。その心臓の筋肉に栄養や酸素を送り、心臓の働きを支えているのが「冠動脈」という血管です。
この冠動脈は、大きい血管からどんどん細い血管に枝分かれし、髪の毛よりも細い微小な血管へと繋がります。
この冠動脈の微小血管が十分に拡張しなかったり異常に収縮したりすると、心臓の筋肉に一時的に血が行き渡らなくなり、動悸や胸痛などの狭心症のような症状がみられる場合があります。
この状態が「微小血管狭心症」です。

  • 原因
  • 原因については、詳しくわかっていませんが、喫煙や寒冷、過労、睡眠不足、精神的ストレスなどが発作の誘因となることが知られています。

  • 診断
  • 発作時でも心電図の変化がほとんどなく、心臓カテーテル検査でも冠動脈の異常がわかりづらいため、症状はあるのに原因がわからないまま診断に至らないこともあります。症状の再発や検査で、継続的な通院や入院が必要になり、仕事や家庭への影響が出て大きな困難に直面している方もいます。

  • 治療
  • 亜硝酸剤(ニトログリセリンなど)やカルシウム拮抗薬などのお薬を内服することで、症状の改善が期待できます。

  • 予後
  • 狭心症とは違い、心筋梗塞や脳梗塞に移行するケースは少ないとされていますが、中には比較的リスクの高い場合もあります。

微小血管狭心症と更年期の関係

微小血管狭心症の発症と関係が深いのが、更年期です。
女性ホルモンのひとつ「エストロゲン(卵胞ホルモン)」には、血管を拡張して血流を保護したり、血管を強くしなやかな状態に保つ働きがあります。
このエストロゲンは、年齢とともに卵巣機能が低下することで、更年期前後から分泌が急激に低下します。
更年期は、エストロゲンの保護作用が失われることに加えて、年齢的に育児や介護、仕事上の責任が重くなり、心身共にストレスのかかりやすい時期です。そのため、更年期は、微小血管狭心症が起こりやすい時期になります。
発症する年齢も、30代半ばから60代半ばが多く、特に40代後半から50代前半の閉経前後に多くなっています。

微小血管狭心症の症状

微小血管狭心症は、一般的な狭心症のような、短時間の胸痛や胸部圧迫感ではなく、下記のような症状が数分から数時間にわたって見られる場合が多いです。

  • 胸痛、胸部圧迫感
  • 動作と関係なく、安静時にも胸の痛みや、圧迫感が見られます。数分以上から半日続くことも珍しくありません。

  • 動悸
  • 動悸は普通では感じることのない心臓の拍動が感じられる状態です。脈が飛んだり、拍動を強く感じたり、速く感じたりする場合があります。

  • 呼吸困難感
  • 息切れや、息苦しい・息を吸っても足りないと感じるなどの症状が見られます。

  • 消化器症状
  • 吐き気や胃痛などの症状が見られます。胸痛と消化器症状は、微小血管狭心症の症状ですが、逆流性食道炎でも同じ症状が見られます。食道炎の場合、水を飲むと胸痛が治まるという特徴がありますので、当てはまる場合は逆流性食道炎の可能性も視野に入れましょう。

  • 放散痛
  • 胸痛やみぞおちの痛みではなく、背中や肩の痛み、顎やのど、耳の後部などの痛みが見られます。これは、放散痛と呼ばれ、本来の痛みの部位とは違うところへ痛みが伝わる状態です。
    どの症状も、更年期症状でみられやすい症状です。しかし、これらの症状が改善せずずっと繰り返しおこる場合には、微小血管狭心症の可能性を視野に入れ、専門の医療機関で詳しい検査を受けましょう。

微小血管狭心症の予防

微小血管狭心症は、血管を労わることが効果的な予防法です。高血圧や脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などの生活習慣病は、心臓を含めた全身の血管を傷つけてしまいます。そのため、これらの生活習慣病を予防することが、微小血管狭心症の予防対策に重要になります。
具体的には、下記の内容に注意しましょう。

食生活の改善

塩分や脂肪分を控え、栄養バランスの整った食事を1日3食とることが大切です。特に取り入れたい栄養素が下記のとおりになります。

  • イソフラボン
  • イソフラボンは、大豆の胚芽部分に多く含まれる栄養素で、エストロゲンの作用によく似た働きを持ちます。エストロゲンの分泌が低下し、微小血管狭心症が起こりやすくなる更年期には、意識的にとりたい栄養素です。
    イソフラボンを多く含む食品は、豆腐、納豆、豆乳、油揚げなどの大豆製品が挙げられます。イソフラボンは、体内に貯蔵できないため、食事ごとにこれらの食品を取り入れるのがおすすめです。

  • ビタミン類
  • ビタミン類は、心身の状態を整える効果や抗酸化作用を持ちます。特に、ビタミンEやビタミンCは、血管を若々しく保つ抗酸化作用や血行改善効果があるため、積極的にとりましょう。
    ビタミンEは、ナッツ類やカボチャ、アスパラガス、キウイフルーツ、鮭、サバなどに、ビタミンCは、いちごやレモン、柑橘類などの果物のほか、さつまいも、ピーマン、小松菜などに多く含まれます。

  • 食物繊維
  • 食物繊維には、血中のコレステロール値を下げる効果があり、動脈硬化症を予防できます。野菜、海草類、豆類、いも類、こんにゃくなどに多く含まれます。

適度な運動

運動は、心肺機能の維持・増進が図れ、老廃物の蓄積を予防できます。また、生活習慣病の予防や肥満の予防、免疫力の向上、更年期症状の緩和などの効果が期待できるため、運動しない手はありません。ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を日常に取り入れましょう。

大量の飲酒や喫煙をしない

アルコールは、コレステロールや中性脂肪を増やす原因になるため、飲酒を控えることが望ましいです。また、喫煙は動脈硬化を促進させたり、更年期症状を悪化させたりするため、禁煙することが勧められます。

ストレスを溜めない

微小血管狭心症はストレスが誘因になるため、ストレスを避け、できるだけ蓄積しないことが大切です。十分な睡眠をとり、ストレスの元から離れたり、接する時間を少なくして心身共に休める時間を意識的に増やしましょう。

微小血管狭心症が疑われる場合は専門医へ相談を

微小血管狭心症は、診断が難しい病気です。症状も、更年期におこる症状と同じような内容ですので、更年期の症状や精神的なものとして見過ごされる可能性もあります。
そのため、微小血管狭心症が疑われる場合には、専門医に相談しましょう。循環器科や、微小血管狭心症の治療実績のある病院やクリニックへの受診が勧められます。

また、微小血管狭心症やその他の循環器疾患が原因だった場合、検査や治療、入院などで医療費が多く必要になることでしょう。更年期に入ったら、ぜひ医療保険の見直しを行うことをおすすめします。

参考文献

女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方 天野恵子

40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」 小山嵩夫

参考URL

日本産科婦人科学会 更年期障害
www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14#:~:text=%E3%80%8C%E9%96%89%E7%B5%8C%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E5%8D%B5%E5%B7%A3,%E3%81%AB%E9%96%89%E7%B5%8C%E3%82%92%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

厚生労働省 活性酸素と酸化ストレス
www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html

日本心臓財団 微小血管狭心症をご存じですか。
www.jhf.or.jp/topics/2016/004291/

日本心臓財団 微小血管狭心症ではないのでしょうか
www.jhf.or.jp/check/opinion/4-1/post_79.html

冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)
www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2013_ogawah_h.pdf

女性に特有の狭心症(微小血管狭心症)
www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/38/3/38_238/_pdf/-char/ja

臨床心臓病学教育研究会 胸部の症状 
www.jeccs.org/general/symptom/chest/

8週間の水中運動教室参加が中高年女性の健康に及ぼす影響
eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/28888/1/88_P259-268.pdf

国立循環器病研究センター 食事療法について
www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet02.html#-6

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