更年期障害におすすめの医療機関:
日本女性医学学会
更年期障害で悩んでいる方にとって、自分の状態に合う病院を見つけることは非常に大切です。更年期障害の症状や程度は個人差が大きく、状態に合わせた治療法を選ぶ必要があります。
更年期障害の症状に合わせた治療法や、専門医の探し方について詳しく解説します。
更年期障害とは
更年期障害は、更年期症状の中でも症状が重く、日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
めまいがひどく起きられない、感情がコントロールできず職場のトラブルの原因になっているなどの状態は更年期障害といえるでしょう。更年期障害は我慢するのではなく、専門の医療機関で適切なケアを受けることが大切です。
更年期障害の原因
更年期障害は、下記の4つの原因が複合的に関与し、発症すると考えられています。
女性ホルモン(エストロゲン)の低下
女性は加齢に伴って卵巣機能が低下します。これにより、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌低下がおこることが、更年期障害の主な原因です。
エストロゲンは、子宮や卵巣に対する働きだけでなく、下記のように全身のさまざまな機能に関係します。
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- 生殖器や泌尿器の働きを維持する
- コラーゲンの生成を助け、髪や肌の状態を整える
- 血管を強くしなやかな状態に保ち、血流を良くする
- 骨の密度を保つ
- 筋肉の減少を防ぐ
- 脳内の神経伝達物質を増やし、脳の機能や心の健康を保つ
- 悪玉コレステロールを減少させ、善玉コレステロールを増加させる
- 糖や脂質の代謝を促す
エストロゲンが低下すると、これらの機能が低下するだけでなく、エストロゲンを調節している脳の視床下部が混乱し、自律神経失調症状が見られるようになります。
加齢による変化
加齢は基礎代謝量の減少を招きます。これにより、痩せにくく太りやすい体質になり、脂肪が付きやすくなります。物覚えが悪くなったり、老眼を発症するのも加齢による変化です。
心理的な要因
成育環境やその人の性格も、更年期障害に関係する場合があります。几帳面、神経質、完璧主義、こだわりが強い、依存心が強い性格の人は、更年期症状が重いといわれています。
社会的な要因
更年期を迎える40~50代は、子どもの巣立ちや親の介護、会社での地位の変化など、ストレスの多い年代です。家庭環境や職場環境などにストレスを感じている人は、更年期障害が出やすい傾向にあります。
更年期障害の分類
さまざまな要因によって発症する更年期障害ですが、その症状は、大きく2つに分かれます。
自律神経失調症状
自律神経失調症状は、エストロゲンの分泌の低下によって、血管の収縮と拡張を管理している自律神経のバランスが崩れることでおこる症状です。主な症状は下記のとおりです。
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- ほてり、のぼせ(ホットフラッシュ)
- 突然の発汗
- めまい、耳鳴り
- 動悸、息切れ
- 頭痛
- 肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み
- 冷え症
- しびれ
- 疲労感
精神症状
エストロゲンの分泌低下は、セロトニンという神経伝達物質の減少に繋がります。セロトニンは、不安の軽減や感情のコントロールといった心を穏やかにする働きや、ノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質の調節をする働きがあります。
ノルアドレナリンは恐怖や驚き、ドーパミンは喜びや快楽などの情報をコントロールしておいるため、セロトニンの減少がおこる更年期は、これらの感情のコントロールが乱れやすい状態です。
主な精神症状は下記のとおりです。
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- 気分の落ち込み
- やる気の低下
- 漠然とした不安感
- イライラ
- 情緒不安定
- 不眠
更年期の治療法
更年期障害は、病院で治療を受けることで症状の緩和・改善につながります。治療法としては、下記が挙げられます。
ホルモン補充療法(HRT)
女性ホルモンを補うための貼り薬や飲み薬、塗り薬を使用する治療法です。
下記のような症状に効果的です。
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- ホットフラッシュ
- 急な発汗
- 動悸
- 足腰の冷え
- 疲れやすさ
- イライラ
- 気分の落ち込み
- 頻尿
- 尿漏れ(過活動膀胱)
これらの症状で、日常生活に影響が及んでいる場合に、ホルモン補充療法が選択されます。
また、ホルモン補充療法は、エストロゲンの低下による更年期症状を緩和するだけでなく、骨粗しょう症や動脈硬化、認知症など更年期以降に発症しやすい病気を予防する効果があります。
ただ、治療期間が長期に渡ると、血栓症や脳卒中、心筋梗塞、乳がんなどの発症に影響を及ぼす可能性があるため、治療経験の豊富な専門医を受診したほうが安心です。
漢方療法
その人の体格や体質、症状に合わせた漢方を内服することで、からだ本来の力を高めるよう全身的に改善していく治療法です。重篤な副作用が比較的少なく、さまざまな更年期の不調を改善・緩和する効果が期待できます。
更年期に効く漢方薬はいくつかあり、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」の3つは「女性の三大処方」と呼ばれている漢方です。
漢方を選ぶ際には、からだの状態を示す「証(しょう)」を判断する必要があります。同じ症状でも、証によって合う漢方が違ってくるためです。そのため、漢方に明るい専門医を受診することが勧められます。
向精神薬
心の状態を落ち着かせる薬を内服することで、心とからだを休める治療法です。
抑うつ、うつ状態、不安、神経質、不眠、だるさ、頭痛・頭重感などの症状が強く、ホルモン補充療法などでもあまり改善がみられない場合に使われることがあります。
これらの症状があると、心療内科や精神科を受診したほうがいいのかと悩まれる方も少なくありません。しかし、更年期におこる精神的な症状は、ホルモン補充療法や漢方が効果的である場合が多いため、まずは更年期に詳しい専門医を受診することをおすすめします。
カウンセリング
ストレスや不安による心の健康状態の悪化は、更年期障害の一因です。症状について相談したり、悩みや苦しさを医師やカウンセラーに話したりすることも大切な治療法です。カウンセラーがいる病院は限られていますので、受診の前に確認しておくといいですね。
また、上記の治療法に加えて、食生活の見直しや運動習慣を身につけ、生活習慣を改善することも大切です。
更年期の専門医の探し方
更年期障害の治療法はいくつかありますが、その中から適切な治療を受けるにはどうすればよいでしょうか?
それは、更年期障害に関する知識や経験が豊富な婦人科医を探すことが重要になります。その方法として、インターネットで検索する方法があります。検索方法として利用したいのが、日本女性医学学会の「近隣の専門医・専門資格者を探そう」です。
日本女性医学学会のホームページ内にあるコンテンツで、お住いの地域を選ぶことで、専門医が在籍している病院やクリニック名、医師名を都道府県別に見ることができます。
病院はリンクが設定されているところも多く、病院のホームページのアクセスが簡単にできます。
また、日本女性医学学会のホームページには、よくある女性の病気について解説記事があり、症状別の検索が可能です。気になる症状があれば、ぜひ調べてみましょう。
更年期障害は1人で抱え込まないことが大切
更年期障害は、症状の種類や程度の個人差が大きいため、辛さを共有しづらく1人で抱え込んでしまう場合も少なくありません。この状態は、更年期症状を悪化させる要因になるため、専門医による適切な治療やサポートが必要になります。ぜひ、日本女性医学学会の「近隣の専門医・専門資格者を探そう」を利用してみましょう。
また、更年期セルフ診断をして、現在の状態を客観的に評価することも大切です。こちらもぜひ利用することをおすすめします。