更年期を乗り切る食事のコツとは?

更年期の対策
21/01/13
更年期を乗り切る食事のコツとは?

更年期には、心身にさまざまな不調がみられます。これは加齢に伴って、卵巣の働きが低下することが大きな原因になります。この変化は避けられませんが、変化を緩やかにしたり、症状を緩和したりすることは可能です。その方法のひとつとして、食事を見直すことが挙げられます。

更年期を乗り切るために、必要な栄養素や食材などの情報を詳しく解説します。

更年期に食事を見直したいワケ

加齢はどの人にも等しく起こる現象です。加齢によって細胞が衰え、体のさまざまな機能が低下することは避けられません。更年期も、卵巣の機能が低下し、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が減少することが主な原因です。

エストロゲンの分泌量を20代の量に戻すことはできません。しかし、食生活を見直すことで、エストロゲンの分泌低下に伴う不調を緩和・改善するだけでなく、新たにおこる症状や病気を予防できる可能性が高まります。

栄養素の働き

食事は、味や食感を楽しんだり、家族や友人との団らんしたりするのに必要不可欠です。そしてなにより、体内に栄養素を取り込み、健康を維持するために欠かせない行為です。
体内に取り込まれた栄養素は、下記の3つの働きを担います。

 

1.エネルギーになる
糖質(炭水化物)、脂質が担う働きです。糖質の摂取量が足りないときには、たんぱく質が分解されてエネルギー源となります。



2.からだをつくる
タンパク質、ミネラル、脂質が担う働きです。タンパク質は筋肉や髪、爪などをつくり、ミネラルは骨や歯をつくります。脂質は、細胞を包む細胞膜などをつくります。



3.からだの調子を整える
ビタミンとミネラルが担う働きです。体温の調節や、体内で必要な物質をつくる、神経の働きに関わるなど、身体の状態を一定に保つのに必要です。

 

栄養バランスの整った食事をとることは、この3つの働きを正常に保つことに繋がり、健康な心身の土台となります。
更年期は、心身のバランスが揺らぐ時期ですが、土台をしっかり保てれば、症状悪化を予防したり、症状を軽減したりする効果が期待できます。

更年期にとりたい栄養素

からだは変化しているのに、食生活はそのままでいいのかと疑問を感じる方もいることでしょう。更年期を乗り切るためには、栄養バランスの整った食事に加えて、意識してとりたい栄養素があります。どんな栄養素があるか見てみましょう。

イソフラボン

イソフラボンは、大豆の胚芽部分に含まれるポリフェノールの一種です。エストロゲンの作用によく似た働きをしてくれるため、エストロゲンの分泌が低下する更年期には積極的にとりたい栄養素になります。 イソフラボンを多く含む食品は下記のとおりです。

  • 豆腐
  • 納豆
  • 油揚げ
  • 厚揚げ
  • 豆乳 など

 

イソフラボンは体内に貯蔵できないため、毎日の食事ごとに上記のような大豆製品を取り入れることが勧められます。

カルシウム

カルシウムは、骨の主成分になるほか、イライラを鎮めたり、血液や筋肉の働きを良くしたりする働きがあります。更年期のイライラや、エストロゲンの低下によって発症しやすくなる骨粗しょう症(こつそしょうしょう)を防ぐために欠かせない栄養成分です。
カルシウムを多く含む食品は下記のとおりです。

  • ちりめんじゃこや鮭などの魚類
  • ヨーグルトやチーズなどの乳製品

 

そして、カルシウムの吸収に欠かせないのがビタミンDです。
食品でとることもできますが、日光を浴びることで体内にビタミンDが産生されます。一日中、室内にいるような生活は避け、日光を浴びる習慣を身に付けましょう。

食物繊維

便秘の改善は、肌のコンディションを整えるのに有効です。更年期にはエストロゲンの分泌低下により、肌荒れや乾燥肌など、肌トラブルが起こりやすいです。そのため、便秘がある場合には便通を改善することで、これらの肌トラブルを緩和する効果が期待できます。
便秘の改善には、食物繊維の摂取がおすすめです。食物繊維は便通を整える効果があります。特にレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という水溶性の食物繊維は、腸内の善玉菌のエサになり、腸内環境を改善する効果が期待できます。

レジスタントスターチを多く含む食品は下記のとおりです。

  • 白米
  • シリアル
  • イモ類
  • 豆類

 

冷凍ご飯を解凍したものは、レジスタントスターチが増えるため、ご飯を多めに炊いて冷凍保存するのもおすすめです。

ビタミン類

ビタミン類は、心やからだを整える効果や抗酸化作用を持ちます。特にビタミンEやビタミンCは、肌や血管を若々しく保つ抗酸化作用や血行改善効果があるため、更年期症状の改善に効果的です。
それぞれの栄養素が多く含まれる食品は下記のとおりです。

  • ビタミンE:ナッツ類、カボチャ、アスパラガス、鮭、サバ、キウイフルーツなど
  • ビタミンC:いちご、レモン、柑橘類、キウイフルーツ、さつまいも、ピーマン、小松菜など

 

タンパク質

タンパク質は筋肉を作る栄養素です。筋肉をつけることで、体熱を作り出す効率が良くなり、血流が良くなり様々な不調の改善効果が期待できます。また、内臓脂肪も燃えやすくなり、糖尿病などの生活習慣病を予防することにも繋がります。タンパク質をとって運動をする習慣を続けましょう。
タンパク質が多く含まれる食品は下記のとおりです。

  • 豚肉
  • 牛肉の赤み
  • 鶏肉
  • 魚類
  • 乳製品 など

 

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、体内で合成できない必須脂肪酸のひとつです。ホットフラッシュの症状緩和に効果的で、心臓の病気や脳卒中の予防効果もあります。
オメガ3脂肪酸は、別名「n-3系多価不飽和脂肪酸」と呼ばれ、下記の食品に多く含まれます。

  • サバやサンマ、ニシンなどの青魚
  • えごま油や亜麻仁油
  • くるみなどの豆類
  • カボチャ など

 

摂りすぎに注意したい栄養素

コレステロール

更年期には、脂質異常症という病気になりやすいです。脂質異常症は、悪玉コレステロールが高い、中性脂肪が高い、善玉コレステロールが低いという3パターンがあり、どれも動脈硬化の原因になります。動脈硬化は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの致死的な病気を引き起こします。
そのため、コレステロールのとりすぎは避けましょう。
肉の脂身、バター、ラード、生クリームは控え、食物繊維の多い野菜やきのこ、海藻、大豆製品をとる量を増やしましょう。

糖分

更年期には糖尿病や糖尿病予備軍になりやすいです。糖分は糖尿病の原因になるほか、脂質異常症の原因となる中性脂肪にもなりやすいため、甘いお菓子やケーキ、炭水化物の摂りすぎには注意しましょう。

食事の基本は3食バランスよく

更年期の食事でとりたい栄養素、控えたい栄養素をご紹介しましたが、一番大事なのは栄養バランスの整った食事をとることです。
更年期症状に効果的だからと特定の食材ばかりを取り続けるのは避けたほうがいいでしょう。
また、更年期にはさまざまな症状が出やすいほか、糖尿病や動脈硬化などの病気を引き起こしやすい状態です。栄養の偏りは病気を招く原因となることを知ることは大切です。
そして、更年期に注意すべき病気についても知り、体調がおかしいと感じたら、病院を受診しましょう。

参考文献

女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方 天野恵子

40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」 小山嵩夫

参考URL

日本産科婦人科学会 更年期障害
www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14#:~:text=%E3%80%8C%E9%96%89%E7%B5%8C%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E5%8D%B5%E5%B7%A3,%E3%81%AB%E9%96%89%E7%B5%8C%E3%82%92%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

厚生労働省 活性酸素と酸化ストレス
www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html

日本家政学会誌 レジスタントスターチの開発
www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/65/4/65_197/_pdf

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