卵胞刺激ホルモンの仕組み、その役割とは
女性の身体に大きな影響を与えているホルモン。さまざまなホルモンがあるなかで、月経や妊娠・出産の準備・維持で重要な役割を担っている女性ホルモンがあります。今回は女性ホルモンを刺激する性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモンについてご紹介します。
卵胞刺激ホルモンとは
卵胞刺激ホルモンとは、脳の視床下部から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン(GnRH)というホルモンが分泌されて、脳の下垂体を刺激します。下垂体からはゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)とよばれる性腺(卵巣)を刺激するホルモンを分泌することで卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。この二つのホルモンが働くことにより、卵巣から女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが分泌されます。女性ホルモンは月経、妊娠・出産などの生殖機能以外にも健康維持に重要な役割も担っています。
特に月経がある年代では、女性ホルモンの分泌の増減が毎月起こります。これは妊娠・出産の準備・維持のためです。女性ホルモンの血中濃度が上がると、視床下部や下垂体に抑制をかけ、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌を減らし、女性ホルモンの分泌を抑えます。これをネガティブフィードバックともいいます。反対に、女性ホルモンの血中濃度が下がると、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌を促進し、女性ホルモンの分泌を促します。ポジティブフィードバックといわれています。このため、卵胞刺激ホルモンの値を調べることで、女性ホルモン分泌の異常が性腺と脳のどちらに原因があるか推測することが可能です。具体的には、無月経、不妊症、下垂体線種などの病気を疑う場合に調べる検査です。女性の場合には、排卵期には卵胞刺激ホルモンの値が高くなるため、正常な排卵が生じているかを調べることもできます。
卵胞刺激ホルモンの検査
卵胞刺激ホルモンは、婦人科の病気のスクリーニングや鑑別診断のために行われる検査でもあり、『FSH』と表記されます。婦人科の病気の治療や経過観察を行うなかで、定期的に検査することもあります。正常値は、以下の通りです。
女性(卵胞期):3.01~14.72mlU/mL
女性(排卵期):3.21~16.60mlU/mL
女性(黄体期):1.47~8.49mlU/mL
女性(閉経後): 157.79mlU/mL以下
※検査方法・検査機関によって異なる場合があります。
黄体期にはFSHは低値となり、更年期で閉経後の場合には女性ホルモンの分泌が著しく下がるため、FSHは高値になることがわかります。子宮摘出術後などの場合には、月経によって判断ができないため、この検査によって閉経後と判断することもあります。
検査で高値の場合、卵巣性無月経、Turner症候群、低値では視床下部性無月経、下垂体機能低下症、神経性食欲不振症などが考えられます。しかし、FSHのみで病気を確定することはできないため、その他の精密検査が必要になります。また、検査をした医療機関や医師の見解によって異なる場合もあります。検査結果は自己判断せずに、担当の医師とよく話し合ってください。
検査をうけるポイント
検査は採血によって行われますが、健康診断の採血などのように食事や運動などの影響を受けないため、事前に食事や運動を制限することはありません。ただ、女性の場合には月経周期によって数値が異なります。排卵期前にはFSHは急激に増加するため、月経3~7日目(なるべく3日目の早い時期)が最適とされています。できれば、普段から基礎体温の記録をし、初診時に1~2周期ほどの記録を持参できると診察がスムーズになります。また、採血のために腕まくりしやすい服装がおすすめです。
卵胞刺激ホルモンの治療法
卵胞刺激ホルモンは、不妊治療の一環として卵胞刺激ホルモンを注射で投与する排卵誘発という方法もあります。ゴナドトロピン療法ともいわれるものです。排卵誘発剤は飲み薬もありますが、それらで効果が得られなかった場合、妊娠に繋がらない場合などに使用されます。ゴナドトロピン療法は、非常に強力なため、多胎や卵巣過剰刺激症候群になるリスクもあり、担当医とよく相談のもと治療方針を決めましょう。
卵胞刺激ホルモンは、女性において卵胞の成長を促進し、FSHの測定は精神刺激ホルモンの分泌機能、卵巣の機能、視床下部・下垂体の機能を知ることができ、状態を把握するために重要なものであるとわかりました。婦人科の病気で気になる症状や検査結果でわからないことがある場合には、担当医によく相談してください。
参考文献
書籍「女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方」p.97~100
参考URL
札幌臨床検査センター FSH(卵胞刺激ホルモン)
MedicalNote 卵胞刺激ホルモン
奈良県立医科大学 卵胞刺激ホルモン
磐田市立総合病院 女性ホルモンと更年期障害
丸山記念総合病院 卵胞刺激について
一般財団法人筑波麓仁会 筑波学園病院