エストロゲンとは、
健康維持にも大切な役割

女性の身体において大切なことといえば、女性ホルモンの役割があります。女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンという二種類のホルモンがあり、なかでもエストロゲンは生殖器機能以外にも身体の健康維持にも関わる役割があります。今回はエストロゲンの作用についてご紹介していきます。

エストロゲンとは

エストロゲンはどうのようにして作られるのでしょうか。エストロゲンは、脳の視床下部というところから分泌されるホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン（GnRH）によって調整され、卵巣からエストロゲンが分泌される仕組みです。エストロゲンは卵胞の発育とともに分泌されるため、卵胞ホルモンとも呼ばれています。

主に乳腺や子宮に作用し、受精しても問題がないように備えています。排卵前の子宮内膜の増殖期にエストロゲンの分泌量は増え、子宮内膜機能層の増殖・肥厚を促し、受精卵が子宮に着床する準備をします。プロゲステロンが「妊娠の維持」といった役割があるなか、エストロゲンは「妊娠の準備」「女性の身体づくり」という役割があります。

月経周期におけるエストロゲンの動き

月経周期はさまざまなホルモンとの相互作用によって調節されています。
女性ホルモンの濃度が上昇すると、脳の視床下部や下垂体に抑制をかけて女性ホルモンに作用するホルモンの分泌を抑制します。これらをネガティブフィードバックといいます。反対に女性ホルモンの濃度が低下すると、女性ホルモンに作用するホルモンの分泌を促進するため、これらをポジティブフィードバックといいます。

月経周期は卵胞期・排卵期・黄体期の3つに分けられます。月経がはじまる日が卵胞期1日目です。卵胞期では、受精しても問題がないように備えて厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、月経の出血となります。この時期はエストロゲンの血中濃度が低くなっています。同時に、女性ホルモンに作用する卵胞刺激ホルモンの血中濃度がわずかに上昇し、それにより卵巣でいくつかの卵胞が成長しはじめます。卵胞期の後半には、卵胞刺激ホルモンの血中濃度が低下、卵胞のうち一つだけが発育を続けて成熟し、エストロゲンが分泌されるようになります。エストロゲンの作用により、女性ホルモンに作用する黄体形成ホルモンの血中濃度の急激な上昇が起こり、次の時期に移ります。卵胞期の期間は約13～14日です。

排卵期は、黄体形成ホルモンによって排卵を促し、女性ホルモンの急激な増加がはじまってから16～32時間後に起こります。この時期ではエストロゲンの血中濃度はピークに達します。放出された卵子が受精できる期間は排卵後12時間程度です。黄体ホルモンの血中濃度の急上昇により、血中濃度・尿中濃度を測定することで女性の身体が妊娠可能な状態である時期を調べる検査としても活用できます。

黄体期には、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度は低下します。卵胞は排卵後に黄体に変化します。エストロゲンの血中濃度は高いまま維持され、女性ホルモンにより、子宮内膜が厚くなっていき、妊娠の準備が進みます。エストロゲンは子宮内膜を刺激し、乳管を拡張する働きもあり、乳房が張ったり、痛みが生じたりすることもあります。受精が起こらなかった場合には、黄体期は14日間ほど続き、月経の前に終わります。黄体は退化し、子宮内膜の厚みが剥がれ落ちて次の月経周期のはじまりです。

エストロゲンは補充できるのか

更年期症状や障害の対策としては、このエストロゲンやプロゲステロンを補充する『ホルモン補充療法』という治療法もあります。しかし、使用するには条件・副作用などもあるため、医師とよく相談してください。また、更年期症状や障害に悩む方向けに、食事やサプリメントなども話題となっていますが、これらはエストロゲンなどの女性ホルモンを補充するものではなく、似た作用が得られるものであり、注意が必要です。

エストロゲンの意外な作用

エストロゲンは女性の妊娠にとても大きく影響しているホルモンであることがわかりましたが、その他の作用にも実は重要なものがあります。エストロゲンは、コレステロールや中性脂肪の調整、骨量の維持などの作用があることがわかっています。

そのため、40代後半～50代前半の更年期、閉経を境にエストロゲンの分泌が低下すると、動脈硬化や脂質異常症、骨粗しょう症のリスクが増加するといわれています。エストロゲンは思春期や成長期でも身体を支え、一生を通して女性の健康に関与するのです。

参考URL

MSDマニュアル家庭版 月経周期

磐田市立総合病院 女性ホルモンと更年期障害

岐阜新聞Web エストロゲン