更年期に眠りの質が下がる!?
不眠の症状と原因、対処方法
45歳前後で睡眠の質が低下している場合、更年期による体調の変化が原因だと考えられます。女性ホルモンの分泌が低下する更年期には心身ともにさまざまな症状があらわれますが、不眠もそのうちの一つです。
更年期症状は「時間がたてば軽快する」と思われる傾向が強い一方、放置すると日常生活もまともに遅れなくなる『更年期障害』につながるリスクが高くなります。また、しっかりとした治療を受けていれば症状の緩和が期待できるため、我慢せずにケアを始めることもとても大切なポイントです。
今回は、不眠の症状と原因、更年期との関係、対処方法についてお話しします。
不眠の症状とは
不眠とは、「寝床に入ってから数時間たっても、眠りにつくことができない」「眠れても、夜中に何度も目が覚めてしまう」「朝早くに目が覚めてしまい、それ以降は眠れなくなる」「十分な睡眠時間をとっているのに、熟睡できている感覚がない」など、寝つきや睡眠の質に問題があらわれる状態のことです。
不眠には、主に
- 寝つきが悪くなる『入眠障害』
- 眠りが浅くなる『熟眠障害』
- 「途中で目が覚める」「早朝に目が覚め、その後眠れない」などの症状が目立つ『中途・早朝覚醒』
の3種類のタイプがあります。
不眠の原因
更年期に起こる不眠の原因は、体力的な原因や精神的な原因など、一人ひとりによって変わるケースが多いです。また、閉経後の夜間頻尿や睡眠時無呼吸症候群が不眠にかかわっているケースもあります。
体力的な原因
体力的な原因は、更年期初期特有の症状であるのぼせやほてり、発汗などです。
更年期を迎えると、『卵胞ホルモン(エストロゲン)』の分泌量が急激に減少し、それに応じて脳の視床下部が混乱状態になります。
視床下部は自律神経をコントロールしているため、卵胞ホルモンが分泌されなくなると自律神経の調節が難しくなります。これにより、「暑い場所にいるわけではないのに熱く感じる」「顔や上半身がほてる」「突然汗をかくようになった」などの症状が目立つようになってしまうのです。
のぼせやほてり、発汗などの症状が出ると、「眠れていたのに、上半身がほてるので大量に汗をかく」という悩みが何度も起こるようになり、「眠れない」「いつも寝不足状態になっている」などの問題につながります。
精神的な原因
卵胞ホルモンは心の状態を健康に保つ脳内物質『セロトニン』の分泌にも関わっていることから、更年期によって卵胞ホルモンの分泌が低下すると、セロトニンの分泌量も少なくなります。
その結果、「物事に対して不安を感じる」不安や「気分の落ち込みが激しくなる」抑うつなどの心の不調があらわれ、睡眠の質が下がるケースも多いです。また、生活のストレスが精神的な負担となり、眠れなくなることもあります。
更年期症状のセルフチェック
45歳から55歳にかけての女性が経験する更年期は、不眠だけでなくさまざまな不調が出やすい時期です。更年期が原因で不眠が起こっている場合には、不眠への治療と合わせて更年期症状への対応も必要となるため、まずは自分自身に更年期症状が出ているかを確かめる必要があります。
- 涼しい場所にいても、顔がほてる
- 汗をかきやすくなった
- 手足や腰の冷えが気になる
- 息切れや動悸が目立つようになった
- すぐにイライラしたり、怒ったりするようになった
- 憂うつな気分が長引き、すぐにくよくよする
- 頭痛や吐き気、めまいが辛い
- 疲れやすくなった
上記の症状は、不眠と同じように更年期の早い時期に起こる症状です。
不眠のほかにこのような症状が起こっているのなら、更年期症状が出ていると考えられます。生活の質に支障が出る更年期障害を防ぐためにも、早い段階から医療機関で検査を受け、必要な治療を受けるようにしましょう。
更年期による不眠への対処方法
更年期症状の不眠に対処するには、体力的な原因が見られる場合と精神的な原因が見られる場合で、それぞれ方法が異なります。また、不眠があまりにも長く続く場合にも専門的な治療や対応が必要となることから、状況に合わせたケアがとても大切なポイントです。
体力的な原因への対処法
のぼせやほてりなど、体力的な原因が考えられる場合には、『ホルモン補充療法(HRT)』が選択されます。
ホルモン補充療法とは、更年期によって分泌が低下する卵胞ホルモンを専用の薬で補う方法です。女性の健康状態を支える卵胞ホルモンを人為的に補うことで、自律神経失調症状、骨や血管の状態の改善、皮膚の症状の緩和などが期待できるようになります。
特に更年期の早い時期にあらわれるのぼせやほてりは自律神経の不調が関係しているため、ホルモン補充療法を取り入れることで、不眠の緩和にもつながります。
ホルモン補充療法の薬の種類や服用方法、投薬期間やタイミングなどは、女性一人ひとりによって異なるケースが多いです。治療費も個人差が見られますが、月に1,000円から5,000円までが一般的な相場だとされています。
ホルモン補充療法は即効性に優れているものの、副作用が出る治療法でもあるため、抵抗感を覚える人に対してはほかの方法をすすめられるケースもあります。体質改善を目的にした漢方や、症状に特化した薬物療法などが使われるケースがほとんどです。
精神的な原因への対処法
心配事やストレス、不安や抑うつなどの精神的な原因が見られる場合には、それらの原因への対応が必要です。
例えば、
- 就寝前のカフェイン摂取を避ける
- 毎日の入浴で体を温める
- アロマオイルを活用し、リラックスできる時間を作る
- リラックスできる方法を取り入れ、心の緊張を和らげる
など、睡眠環境を整える工夫をしてみましょう。そのほか、早寝・早起きをはじめとする規則正しい生活や栄養バランスが良い食事、運動の習慣なども、心のストレスを緩和させるために適した方法です。
不眠で辛いときはメンタルクリニックの受診も
更年期症状は更年期を迎えた女性には必ずと言っていいほど起こるものですが、眠れない状態が続くことは生活の質を大きく下げてしまいます。適切な治療とケアをしていれば症状の緩和ができるようになるため、「更年期だから仕方がない」と楽観視せず、不眠の緩和を目指しましょう。
あまりにも症状がひどいのであれば、メンタルクリニックや女性外来の受診もおすすめします。専門家のアドバイスと治療を受け、更年期でも十分な睡眠がとれる環境を作りましょう。
ネットやサイトなどの情報から、医療保険の見直しも検討しましょう
一般的に45歳から55歳までと言われる更年期は、体調の変化が非常に激しい時期です。不安定な体調が続くなかで日常生活を送ることは難しいため、医療機関での治療で対応することが必要です。
定期的な治療や通院によって金銭的な不安が増えてしまう場合は、医療保険の見直しを検討してみるといいでしょう。これから治療費がかかる前にご自分に合った医療保険を選ぶことで、金銭的な負担を抑えられるようになります。
体力的・精神的、金銭的なストレスをなくし、更年期の症状に上手に向き合っていきましょう。