汗が止まらない!
寝汗や発汗の原因・症状と対処方法とは?
日中や夜間に突然、汗が吹き出したり、寝汗でパジャマが濡れたりして驚いた経験はありませんか?
発汗は更年期症状のひとつで、時や場所を選ばず起こるのが困りものですね。
更年期におこる発汗の原因や対処法などについて詳しく解説します。
更年期の発汗はなぜおきる?
更年期の発汗は、自律神経のコントロールがうまくいかなくなることが主な原因です。
更年期と自律神経、一見関係なさそうですが、実は深い関係があります。更年期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)が低下しますが、このエストロゲンと自律神経は、脳の視床下部という場所で調節されているという共通点があります。
この共通点によって、下記のような変化が更年期に見られます。
1.エストロゲンの分泌低下
エストロゲンは女性ホルモンのひとつで、その8割が卵子を包む卵胞から分泌されます。
加齢によって卵巣機能が低下すると、卵胞を育てる力が低下し、エストロゲンの分泌が少なくなっていきます。
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2.エストロゲンの分泌が増えず、視床下部が混乱
エストロゲンの分泌が減少すると、脳の視床下部(ホルモンや自律神経の調節を行う部分)がエストロゲンを増やすよう、卵巣に指令を送ります。
しかし、卵巣の機能低下によってその指令に徐々に反応できなくなくなり、エストロゲンが増えないため視床下部が混乱し始めます。
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3.自律神経のバランスに影響が出る
視床下部の混乱は、自律神経の調節に影響するようになります。自律神経は全身のさまざまな機能のオンとオフを司っています。
自律神経が乱れると、寒くても顔がほてったり、汗が噴き出るなどの自律神経失調症状が現れます。
このように、加齢によるエストロゲンの低下が自律神経失調症状を引き起こします。
自律神経失調症状には、のぼせやほてり、めまいなどのほか、発汗などの症状が見られる場合があります。
発汗症状の例
更年期に見られる発汗の症状は、汗がにじむ程度のこともあれば、滝のような汗が突然噴き出すこともあります。
具体的な発汗症状の例を見てみましょう。
- 暑くもないのに汗が止まらない
- 顔面や首、上半身だけ汗を多くかく
- のぼせやほてりなどのホットフラッシュに伴って大量の汗が噴き出す
- 寝汗がひどく、途中で起きる
上記のような突然の発汗によって、人目が気になって外出できなくなったり、夜間に頻繁に目覚めることで寝不足になったりすることがあります。そのため、日常生活に支障が出る場合もあり、単に汗をかくだけでは済まない場合があります。
突然の発汗を防ぐには
突然の汗を予防するには、自律神経を整えることが大切です。具体的な方法は下記のとおりになります。
規則正しい生活を送る
自律神経を整えるには、早寝・早起きする、三食きちんと食事を取る、適度な運動習慣を取り入れるなど基本的な生活習慣を整えることが必要です。
ついつい夜更かししたり、朝食を抜いたり、運動をまったくしない状況が続いたりすることは避けましょう。
栄養バランスのよい食事を取る
発汗の前ぶれにもなるホットフラッシュは、オメガ3脂肪酸を含む食事を取ることで症状が軽減されます。
オメガ3脂肪酸は、別名「n-3系多価不飽和脂肪酸」と呼ばれ、下記の栄養素が含まれます。
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- DHA(ドコサヘキサエン酸)
サバやサンマ、ニシンなどの青魚に多く含まれる - EPA(エイコサペンタエン酸)
DHAと同じく、青魚に多く含まれる - αリノレン酸
えごま油や亜麻仁油、くるみなどの豆類に多く含まれる
- DHA(ドコサヘキサエン酸)
これらのオメガ3脂肪酸は体内で作れないため、食事から摂取する必要があります。
上記の食材を取り入れ、栄養バランスが整ったメニューを意識するようにしましょう。
ストレスを避ける・解消する
ストレスは、自律神経のバランスを乱す原因になります。
そのため、更年期で自律神経が弱っているところへストレスがかかれば、より更年期症状が強く出やすくなるのは想像できますね。
もし、ストレスに感じていることがあれば、そのストレスの元から離れたり、ストレスを発散して心とからだを休ませることが大切です。
お風呂にゆっくり浸かる
シャワーだけで済ませるのではなく、湯舟に浸かってゆったりと入浴しましょう。
入浴することで、副交感神経のスイッチが入り、からだがオフの状態になります。発汗は交感神経が働いているときに出ますので、リラックスできる時間を持つことは大切です。
就寝する1時間以上前に入浴することで、夜間よく眠れるという効果も期待できます。
衣服や下着を調整する
更年期には、冷えのぼせの状態になることが多く、発汗も顔や上半身にかくことが多いです。
冷えのぼせは、上半身はのぼせ下半身は冷えますので、上半身は涼しく、下半身は冷やさない下着や衣服の調整を行いましょう。
腹式呼吸する
ホットフラッシュや発汗が起こる感じがしたら、ゆっくりと腹式呼吸して気持ちを落ち着かせましょう。
症状を和らげるのに役立ちます。
禁煙する
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、全身の血流を悪くします。
そのため、喫煙者は禁煙することが勧められます。受動喫煙(タバコの煙や禁煙者が吐き出す煙を吸うこと)でも同様のことが言えますので、家族に喫煙者がいる場合は、禁煙を促す、喫煙者と同じ部屋は避けるなどの対策を行いましょう。
2006年4月から、禁煙治療が保険適応で受けられるようになっています。
突然の発汗の対処方法
突然の発汗を100%抑えることは難しいでしょう。
外出先や就寝中など、発汗が起こった場合の対処法を考えておくと、もしものときに慌てずに済みますね。場面別に対処法を見てみましょう。
外出先
機能性インナーの着用
吸水速乾性の高いものや、消臭効果のあるもの、脇に大きめの汗取りパッドが付いているものなど、発汗に備えられるインナーが数多くありますので、ぜひ利用してみましょう。
厚手のタオルを常備
ガーゼ素材や吸水性の高い厚手のタオルがバッグに入っていると、突然の顔汗も安心ですね。予備のタオルや、汗で濡れたタオルを入れておく防水性の袋があると便利です。
汗拭きシートの使用
汗をかいた後のベタベタ解消、消臭、ひんやりと爽快感を与えてくれるものなど、汗拭きシートにはいろいろなタイプがあります。香り付きのものもありますので、自分にあった汗拭きシートを探すのもいいですね。
顔用にお化粧直しシートがあると、メイク崩れにも対応できるでしょう。
就寝中
就寝中
寝汗がひどい場合、吸水性の低いパジャマでは寝汗を吸収できず、夜間に目覚める原因になります。吸水性の高い綿やシルク素材のパジャマが望ましいです。
また、寝具も吸湿性や速乾性の高いものを選ぶと、発汗による不快感を軽減できるでしょう。
枕元に着替えを準備
夜間の大量の発汗で着替えが必要なとき、枕元にパジャマや下着、タオルがあればすぐに対処できますね。汗拭きシートもあると、ササッと汗を拭きとれ、翌日ににおいが気になることも防げるでしょう。
発汗=更年期ではない場合も
発汗が多いという症状は、更年期に限ったものではないため、甲状腺の病気などの可能性もあります。
どんな症状があるか、更年期セルフ診断でチェックしてみましょう。
更年期の可能性が高く、症状に悩まれている場合には、専門医のいる婦人科を受診し、早めに治療を受けることが望ましいです。日本女性医学学会のホームページでは、専門医が在籍している病院を検索できるようになっています。
更年期の可能性が低く、動悸や体重減少などの症状が見られる場合は内科を受診して相談してみましょう。
参考文献
女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方 天野恵子
40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」 小山嵩夫
参考URL
東北大学病院◆必須脂肪酸とは・・・
www.hosp.tohoku.ac.jp/pc/img/tyuuou/nst_shibo.pdf
宮崎大学医学部自律神経の働き
www.med.miyazaki-u.ac.jp/community-medicine/child/jiritsu/jiritsu_2.htm
日本内分泌学会バセドウ病
www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=40
日本女性医学学会
www.jmwh.jp/