更年期にむくみやすくなる?!
症状と原因、対処方法

血管運動神経系の症状
21/03/22
更年期にむくみやすくなる?!<br />症状と原因、対処方法

「いつも顔や体がパンパンにむくみ、リンパケアでも良くならない」「手指がむくむ」「むくみのせいか、体重増加も気になっている」「体の冷えも出てきた」、45歳前後でこのような症状が出ている場合、更年期が原因だと考えられます。

更年期は女性ホルモンの分泌が低下するため、「仕方がない」「我慢するしかない」と思われがちですが、適切な対応やケアをしていれば症状の緩和は十分に可能です。また、症状の緩和を心がけることで日常生活への影響を抑えることもできるため、あきらめずに少しでもより良い健康状態を整える必要があります。

そこで今回は、むくみの症状や原因、対処方法について解説します。

むくみの症状

まずむくみとは、血液中にある体液が血管の外に漏れ出た状態のことです。これにより、体内で水分が過剰に増加し、「顔や体などの見た目が変わる」「体重が増える」などのトラブルが起こるようになります。

肥満とむくみとの違い

突然体重が増えると、多くのケースで肥満と混同されますが、肥満による体重増加とむくみによる体重増加は別物です。脂肪の増加によって体重に影響が出る肥満に対し、むくみは水分の増加によって体重が変動します。

例えばむくみが気になる部分を指で押してみて、凹みが出るようであれば、水分による体重増加が原因だと言えます。

更年期にむくみやすくなる原因

45歳あたりからむくみが出ている場合、更年期による体の変化が関係している可能性が高いです。

更年期による体の変化

一般的に、45歳から55歳までの女性は、卵巣機能が低下する更年期を迎えます。卵巣機能が衰えると、女性の健康を支えるホルモン『卵胞ホルモン(エストロゲン)』の分泌が低下します。これにより、その変化に体が混乱するため、いわゆる『更年期症状』が増えていくのです。更年期症状にはさまざまな症状がありますが、むくみもそのうちの一つです。

更年期で女性ホルモンのバランスが乱れると、同時に自律神経も乱れます。自律神経は血液循環との関係性が深いため、自律神経に問題が起こると交感神経が働き過ぎ血管が収縮してしまうため、血行が悪くなり、むくみやすい体質になってしまいます。

更年期症状には個人差があり、あまり悩まずに乗り越える女性もいれば生活に支障が出るほどに症状が悪化し、『更年期障害』に苦しむ女性も少なくありません。

また更年期を迎えるころは子供の自立や夫婦関係の問題、介護に加え、職場での立場の変化や容姿へのコンプレックスが目立つ時期でもあるため、それが更年期障害を悪化させるケースも少なくありません。
「更年期は女性であれば多くの人が経験する」「我慢していれば、時間が解決してくれる」と思わずに、些細な症状や異変でも楽観視せず、医療機関での検査や治療、セルフケアで対応していく必要があります。

更年期による冷えがむくみの原因になるケースも

更年期におけるむくみは、女性に多い悩み『冷え』との関わりも無視できません。

もともと女性は男性よりも筋肉量が少なく、貧血や低血圧になりやすく、また皮膚温も低い傾向にあります。また体力虚弱になりやすいともいわれています。そのため、体内での熱再生や血液循環に問題が出やすくなることから、冷え性に悩むことが多いです。

冷え症は自律神経失調症や頭痛、腰痛、関節痛、腹痛、肩こりなど、多くの体の不調を引き起こす原因で、むくみも例外ではありません。更年期になると以前よりも冷え症に悩む女性が増えるため、更年期を迎えたら一層冷え対策を意識する必要があります。

更年期症状のセルフチェック

さまざまな不調が増える更年期には、医療機関での検査や治療、個人でのセルフケアが不可欠になります。以下のリストからむくみのほかに更年期症状が出ていないかを確かめてみましょう。

  • 顔のほてりや上半身ののぼせが出る
  • 急に汗をかくようになった
  • 腰や手足が冷える
  • 息切れ、動悸で悩んでいる
  • 睡眠の質が低下している
  • イライラするときが増えている
  • 気分が落ち込みやすく、よく不安になる
  • 頭痛やめまい、吐き気がよく出る
  • 疲れやすくなった

 

上のような症状に少しでも心当たりがあるのなら、更年期症状が始まっていると言えます。更年期障害にまで悪化させないよう、早めに医療機関を受診して状態を確認しましょう。

危険なむくみに注意しましょう

むくみの原因には、心不全やリンパ浮腫、甲状腺機能低下症など、医療機関での治療が必要な病気が隠れている危険性もあります。このような病気を早期に発見するためにも、むくみが目立つ場合には1日でも早く医師による検査を受けましょう。

更年期によるむくみへの対処方法

更年期によって卵胞ホルモンが分泌されなくなると、筋肉の減少や代謝の衰え、体温の低下など、多くの体の変化が起こるようになります。そしてこれらの変化は、更年期以降の体調不良を引き起こす冷えの原因でもあります。

だからこそ、更年期症状を緩和させるためにも、冷え対策に意識を高めることが必要なポイントです。

むくみを防ぐために必要な5原則

以下のリストは、むくみの原因となる冷え症を予防するために役立つポイントです。毎日の生活に取り入れ、心身ともに健康な状態を保ちましょう。

  • 原則①:早寝・早起きで体内リズムを整え、起床後には太陽の光を浴びてセロトニンを増やす
  • 原則②:和食や地中海食など、栄養バランスが整った食事を心がける(和食は塩分が多いため、薄味にする)
  • 原則③:ストレッチやウォーキングなどの適度な運動を続け、体の血流を改善する
  • 原則④:自分のペースを大切にして、無理をせず、ストレスをためないように気を付ける
  • 原則⑤:毎日入浴し、体を温める

 

以上の5原則は、一見簡単そうな生活習慣の改善のように感じられますが、体と心を正しい状態に保つためには欠かせないポイントです。
例えば毎日の入浴をシャワーだけで済ませていると、お腹の芯まで温まらないため、内臓が冷えた状態になってしまいます。不規則な食習慣や運動不足、ストレスの多い生活も、冷えを引き起こしやすいと考えられています。

卵胞ホルモンの分泌がされなくなり、以前よりも体調がデリケートになりやすい更年期だ からこそ、毎日の健康管理をおろそかにしないように気を配りましょう。

医療機関での治療も検討しましょう

更年期によるむくみは毎日の生活習慣の見直しで緩和させられますが、念のために医療機関を受診し、必要な治療を受けることも大切なポイントです。むくみだけでなくほかの症状も一緒に起こっている場合には、症状に合わせた治療が必要でもあるためです。

医療機関では更年期に対し、主に『ホルモン補充療法(HRT)』『漢方』などの治療法が使われます。ホルモン補充療法は専用の薬剤を服用し、更年期で減少する女性ホルモンを人為的に補います。漢方は東洋医学の観点から、体質改善を目的に薬を処方し、更年期症状を緩和させるための方法です。

ホルモン補充療法には即効性が期待でき、漢方ではホルモン補充療法ほどの即効性は見られないものの、副作用のリスクが低いことがメリットです。どの方法がご自分に合っているのかを医師と相談し、続けられる治療法を選択しましょう。

更年期治療のために、医療保険の見直しもおすすめです

更年期はむくみをはじめ、心身ともに不調が増える時期です。生活の質を落とさないためには医療機関での治療が必要になりますが、金銭的な負担が増えるという事実もあります。実際にホルモン補充療法の相場は1か月に1,000円から5,000円と、個人差こそあるものの金銭的な負担が増えることがわかります。

金銭的なストレスを軽減するためにも、医療保険の見直しを検討してみましょう。ご自分の治療計画や状態に合わせた保険を選びなおすことで、新たなストレスを防げるようになります。

適切な状態で治療が受けられる環境を整え、長く続く更年期と上手に付き合っていきましょう。

この記事を監修している先生

時計台記念病院

藤井美穂先生

社会医療法人社団 カレスサッポロ 時計台記念病院
院長・女性診療科部長  藤井 美穂 MD・PhD

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