動悸・息切れの原因・症状と対処方法
更年期によくみられる症状として、動悸・息切れがあります。これらの症状により日常生活に影響が出てしまうことも少なくありません。更年期にみられる動悸・息切れとはどのような原因、症状があるのか、対処法についてご紹介します
更年期の動悸・息切れ
動悸とは、心臓の心拍数が増えたり、拍動(リズム)が大きくなったりすることを指します。
よく、「胸(心臓)がドキドキする」というような表現が使われます。息切れはその名の通り、呼吸が浅く、はやくなる、息苦しさを感じる症状です。特に緊張・興奮時、運動時でもないのに、このような症状が現れる場合は、動悸・息切れの症状として、何かしら身体に異変が起こっている証拠です。
更年期症状として、二つの症状はよくあげられますが、原因はさまざまあります。心臓や肺、血液系、甲状腺などの病気ではなく、更年期症状の場合、原因として考えられるのは自律神経の失調によるものです。
更年期と呼ばれる50歳前後の閉経前後の時期では、卵巣の機能が低下、女性ホルモンの分泌の低下により、脳の視床下部がつかさどる自律神経の調整がうまくいかなくなります。
自律神経とは、身体のなかの心臓や肺、消化器系の活動を調整するため、24時間働き続けている生命維持にとても大事なものです。自律神経の失調とは、身体の活動時に活発になる交感神経と、安静時に活発となる副交感神経のバランスが崩れた状態を指します。
更年期症状と併せて、仕事の人間関係や重圧などの精神的ストレス、寝不足や不規則な生活などが原因で自律神経の乱れに繋がることも考えられます。
実際には動悸・息切れを起こす原因はひとつだけではなく、こうしてさまざまな要因で起こっていることも少なくありません。
自律神経の失調には疲れやすさ、めまい、のぼせなどの症状があり、動悸・息切れも自律神経の失調で起こる症状として多くみられるものです。
心臓などの病気の可能性
動悸・息切れでまず考えるのが、心臓などの循環器の病気です。不整脈や心不全、心筋梗塞などといった病気では、動悸・息切れのほかにめまいや失神、胸痛(背部痛)などを伴うことが多いです。
どれも緊急を要するものなので、症状が続く場合には、早めの受診をおすすめします。確定診断のために、いつ頃から症状が出はじめたのか、どういうときに症状が起こるのかなどの問診と採血や心電図、レントゲン、エコー検査などを行い、心臓の病気かその他の病気かの鑑別を行います。
また、心臓以外では肺や甲状腺などの病気が考えられます。喘息や肺気腫・慢性気管支炎などの肺や気管支などの病気では息切れの症状が強く出て、階段の昇り降りなどで症状が悪化することがあります。甲状腺などのホルモン異常の病気、貧血などでも同様の症状が起こり得ます。
更年期症状の動悸・息切れの対処法
動悸・息切れの症状があった場合の対処法としては、一時的に落ち着かせるための対処法と症状の観察、日頃から気をつけることなどがあります。
一時的に落ち着かせるための対処法
症状が現れたとき、椅子や横になれるような場所で楽な体勢をとり、ゆっくりと深呼吸をし、安静にします。それでも症状が治まらない、安静にしていても動悸や息切れを感じる、またはその回数が増えてきた場合には、病気が隠れている可能性が高いため、早めの受診が必要です。
どのような症状かを観察する
受診をして更年期障害か他の病気かの判断をするとき、医師を前にすると、症状を伝えることを忘れてしまうこともあるため、あらかじめ症状の観察、メモしておくとスムーズです。例えば以下のような内容です。
脈拍数(1分間)
親指の付け根ちかく、首元に3本指(人差し指、中指、薬指)をあて、脈が触れるところを探します。そこで一分間に何回脈が触れるかを数えます。脈が1分間に100 以上だと、頻脈と判断できます(緊張や運動後は除く)。
脈拍のリズムが一定であるか
脈拍のリズムが飛んだり、不規則になったりすると不整脈の可能性があります。ただ、一般の人では判断がつきにくいこともあるため、わかりにくい場合には無理に確認しなくても大丈夫です。
どのようなときに動悸・息切れがあったか
昼間ずっと続いているのか、眠りにつくときに起こるのかなど、症状がどのようなときに起こっているか、またその持続時間を観察しましょう。
いつから症状があるか
こうした症状がいつ頃から感じるようになったのか、これも診断のために必要な情報です。症状が現れたとき、仕事やプライベートでなにか問題があった場合、精神的なストレスなどの原因も考えられるためです。
動悸・息切れ以外の症状があるか
心臓や肺、甲状腺などの病気の可能性を考えるときに、他にどのような症状があるのかによって、検査項目などが変わってきます。
日頃から気をつけること
心臓などの病気ではなく、ストレスや過労、更年期症状などからくる自律神経の失調によって起こる場合、夜更かしなどはせず、充分に休息をとることが必要です。また、バランスのとれた食事、適度な運動も大切です。
これを食べたら大丈夫と呼ばれるものはありませんが、主食(熱や力となる食品):副菜(体の調子を整える食品):主菜(血や肉となる食品)=3:2:1を目安に日頃から工夫していきましょう。
【食事バランスガイド】
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html
適度な運動は、動悸や息切れの症状が落ち着いているときに、呼吸を整えてリラックスする、ストレッチなどからはじめていきましょう。週に数回、1日あたり30~60分程度行うのが理想ですが、ご自身の体調に合わせて行ってください。
運動する時間帯としては、早朝空腹時や食後すぐ、入浴・飲酒後ではなく、食事後2時間くらいで行うことをおすすめします
対症療法として薬物治療や漢方を活用
対症療法として、薬物治療や漢方などで症状を抑えることも可能です。特に更年期障害のような、病気ではないけど不定愁訴のような複数の症状に対しては漢方が得意とするところです。
対症療法としては、更年期症状の動悸・息切れにより不眠、気分の落ち込みなどがあれば、ホルモン補充療法、抗不安薬や睡眠薬などの対処法があります。これらは、その他の考えられる病気がないことが分かったうえで、受診先の医師に相談するといいでしょう。婦人科や女性外来、更年期外来、漢方外来など、専門とした窓口もあります。
まとめ
日常生活に影響が出てしまう更年期症状。なかでも動悸・息切れの症状には他の病気が隠れている可能性もあります。「更年期だから…」と諦めたり、放ってしまったりする症状も、適切な治療を受けることで改善がみられます。
日々の生活で対処できることから薬物治療や漢方治療まで、自分のペースで体調をみながら専門機関で相談していきましょう。
参考:
・書籍:女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方
・順天堂大学医学部附属順天堂医院 看護部
www.juntendo.ac.jp/hospital/support/kangobu/patient/symptoms/symptoms01.html
・ドクターズ・ファイル 自律神経失調症
doctorsfile.jp/medication/127/
・更年期ラボ
ko-nenkilab.jp/countermeasure/
ko-nenkilab.jp/symptom/palpitation.html
・食事バランスガイド
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html