更年期の性交痛の原因と対策

泌尿器・生殖器系の症状
21/01/19
更年期の性交痛の原因と対策

閉経前後の更年期の悩みはさまざまなものがありますが、そのなかに性行為の際に痛みを伴う性交痛というものがあります。
これまでは気にならなかったのに、閉経前後でこうした症状の訴えが多くなるのは、いくつか理由が考えられます。
今回は、更年期の悩みのひとつ、性交痛についてご紹介していきます。

更年期に起こる性交痛の原因とその症状

更年期では、女性の身体のなかで大きな変化があります。
そのひとつが女性ホルモン(エストロゲン)の低下です。閉経前後では女性ホルモンを分泌している卵巣の機能が低下してきます。そのため女性ホルモンの低下が起こりますが、これらは月経や妊娠・出産に関わるだけではなく、健康を維持するためのものでもあるのです。
こうした女性ホルモンに関する影響で、性交時に痛みを伴うことがあります。原因として考えられるのは、以下のようなものです。

萎縮性膣炎

閉経後には膣の粘膜が萎縮し、炎症を起こしやすくなります。女性ホルモンは膣の粘膜に潤いを与える働きがあり、膣内を細菌から守っています。
しかし、閉経後で女性ホルモンの分泌が低下することで、膣の粘膜が乾燥し、薄くなり、萎縮が起こります。これを『萎縮性膣炎』といいます。膣の粘膜に炎症が起こりやすくなると、性交時の刺激で膣が傷つきやすく、痛みや出血を伴うのです。
閉経後の外陰部のひりひりした痛みや、排尿時のしみる感じ、黄色や褐色のおりものなどの症状もあげられます。

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮がん

30代~40代の更年期にさしかかる女性に多い病気が子宮内膜症と子宮筋腫です。
子宮内膜症は子宮内膜が本来あるべき子宮の内膜以外で発生し発育する病気です。症状は月経痛や下腹部痛、性交痛、不妊があります。
子宮筋腫は、子宮の壁にできる良性の腫瘍で、卵巣から分泌される女性ホルモンによって大きくなり、閉経すると小さくなります。複数個できることもあり、数や大きさはさまざまです。
この子宮筋腫が子宮の内側などにできると、性交時に腹部の違和感、痛みを感じることがあります。

主な症状としては、月経量が多い、月経痛がひどくなる、不正出血、頻尿などがあります。子宮筋腫は初期症状がないことも多く、健康診断などで指摘されることも多いです。
また、同じく子宮にできるがんでも性交痛を感じることがあります。子宮がんには大きく分けて二つあり、子宮体がん(子宮の奥にある体部にできるがん)と子宮頸がん(膣から子宮の入り口にかけてできるがん)です。
特に子宮体がんは更年期の女性に多く発症する病気であり、女性ホルモンの影響が原因として考えられています。
それぞれ月経時以外の不正出血や下腹部痛、性交痛などの症状があります。

卵巣嚢腫

卵巣に発生した腫瘍のうち、袋のような嚢胞の形をしたものを卵巣嚢腫と呼びます。ほとんどが良性で20~40代に多い病気です。通常は2~3㎝くらいの大きさの卵巣ですが、嚢腫が大きくなると30㎝を超えることもあります。
症状としてはお腹の張り、下腹部痛、頻尿などです。性交時に違和感や痛みを伴うことで気づいたり、嚢腫が破裂したり、捻転という嚢腫がねじれてしまうことで、強い下腹部痛があり、病気がわかることもあります。

性感染症

クラミジア感染症やカンジダ症などの性感染症により、性交痛が起こることもあります。若年層の方が感染リスクが高く、感染に気付かないことも多いですが、更年期世代でも注意が必要です。

誘発性腟前庭痛

誘発性膣前庭痛(PVD)は膣の入り口の感受性が高くなった状態で、少し触れただけでも痛みを感じるものです。
原因ははっきりとしていませんが、神経経路と脳の一部が物理的に変化して感受性が高くなると考えられています。骨盤筋の緊張があると痛みが増したり、性交後に膣の灼熱感が生じたりすることもあります。

性交痛を伴う症状、病気の治療

性交痛を伴う原因が子宮や卵巣の病気である場合には、根本的に病気を取り除く、小さくするための手術や薬物治療などをすすめられます。
それらにより、性交時痛が改善することでしょう。しかし、萎縮性膣炎のような、生命をおびやかすような病気ではない場合、対症療法としてさまざまな方法が考えられます。

炎症に対する治療

萎縮性膣炎のような炎症が起こっている場合には、抗生剤などの飲み薬や塗り薬を使用し、炎症を抑えます。また、外陰部を清潔に保つことも必要です。

女性ホルモン補充療法

女性ホルモンの低下により、症状が起こっている可能性があれば、飲み薬や貼り薬などで女性ホルモンの補充を行います。
しかし、補充をやめてしまうと、数か月で元に戻ってしまうため、定期的に継続して服用する必要があります。ホルモン治療は効果や副作用が怖いと思われる方もいるかもしれませんが、さまざまな種類があるため、産婦人科やレディースクリニックの医師とよく相談をして決めましょう。

痛みのある部分を刺激しない方法

痛みのある部分を刺激しない方法としては、石けんや入浴剤、締め付けのきつい下着など、刺激物となる可能性のあるものを避けることも必要です。
性交時には潤滑作用のある水性のゼリー、刺激の少ないコンドームを使用、性交時の体位を変えるなどの工夫もあります。
また、挿入以外のスキンシップを楽しむこともときには必要です。最近ではいわゆるアダルトグッズもスタイリッシュなものが多く、それほど抵抗感なく使えるようになっています。

精神療法

膣や子宮、卵巣に炎症、腫瘍がある以外にも、精神的な原因で性交痛を伴うこともあります。
性行為に対して恐怖感や嫌悪感、加齢による身体的症状の増加などがある場合には、腟潤滑液の分泌が少なくなり、痛みを感じることもあります。精神的なアプローチ法としては、認知行動療法やマインドフルネス認知療法、心理士によるカウンセリングなどを行います。
特に閉経後の女性は女性ホルモンの分泌が低下するため、情緒が不安定になりやすく、「今までできていたのに、なぜできないのか」と男性に思われてしまうことで、精神的に落ち込む人も少なくありません。
しかし、焦ることでより性行為への緊張感が強くなってしまうため、ゆっくりと丁寧に治療を行うことが大切です。

性交痛は女性の多くが経験することとされており、珍しいものではありません。これらの症状の原因には、子宮や卵巣などの病気が隠れていることや、神経系、精神的なものまでさまざまです。
特に子宮や卵巣の病気は早期発見されれば、小さな手術で済むことも多いです。
性行痛は相手にも周りにも相談しにくく、一人で抱え込み、自分が我慢をすればと思ってしまうこともありますが、まずは気になる症状がある場合には、産婦人科やレディースクリニックを受診し、相談してみてください。

参考:

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