月経異常、生理不順。
もしかすると更年期サインかも

泌尿器・生殖器系の症状
21/03/22
月経異常、生理不順。<br />もしかすると更年期サインかも

40代に入り、生理周期が遅れる、生理が来ない…という状態になると、そろそろ更年期のサインかと思うかもしれません。更年期になると、生理や体の変化はどのようになるのでしょうか。この記事では、更年期に関する月経異常、生理不順についてご紹介していきます。

生理不順、更年期に起こり得る体の変化

更年期に起こり得る月経異常、生理不順に関連するものとして、まず「閉経」があります。これは、卵巣の機能が徐々に低下しはじめ、生理不順から完全に月経が閉止した状態で、1年以上続いたときに閉経といいます。
閉経の年齢は個人差も大きいですが、早い人では40歳前半、遅い人では50歳後半に迎えます。日本人の平均閉経年齢は約50歳で、閉経の前後の10年間を「更年期」と呼ぶのです。

卵巣の機能は加齢とともに衰えていきます。閉経前には卵巣のなかの卵胞(卵子を包み込んでいる袋)の数が減り、一般的には月経周期が短くなったり、反対に長くあいたり、経血の量が少なくなったり、多くなったりします。
ホルモン分泌が不安定となると、排卵を伴わない無排卵月経の確率も高くなり、妊娠する力も段々となくなっていきます。閉経までの経過も個人差が大きく、それまで順調に生理周期が来ていたのに、突然なくなり、そのまま閉経するケースもあります。こうした月経異常、生理不順は更年期のはじまりのサインといえます。

この更年期に現れる体の変化はさまざまあり、ほてりや発汗、めまいや頭痛、疲労感、気分の落ち込み、不眠などがあげられます。これらの不調を他の病気を伴わないものを「更年期症状」とし、症状がひどく、日常生活に支障が出る状態を「更年期障害」といいます。
しかし、注意が必要なのは、更年期に起こる不調はすべてが更年期症状ではないということです。なかには、仕事や私生活のトラブル、ストレスや過労による月経異常や生理不順、他の病気が隠れている可能性もあります。安易に「更年期だから…」と放っておくこと、我慢することはせず、まずは更年期症状であるかどうか、他の病気の可能性はないかどうかも忘れずにいましょう。

更年期に起こる月経異常の原因

正常な月経周期は”25~38日で変動が6日以内、持続日数は3 ~7日以内”とされています。これらにあてはまらない状態を月経異常、生理不順と呼びます。無月経は妊娠していないにも関わらず、3か月以上月経がない状態を指します。
更年期に起こる月経異常の原因のひとつには、閉経に関連するものが考えられます。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌は20~30代でピークとなり、40代に入ると徐々に減っていき、閉経前後には大きく減少します。そのため、生理周期が短くなったり、長くなったり、経血の量が不安定となることがあります。これは病気ではなく、あくまで加齢に伴う自然な流れです。

しかし、身体的・精神的なストレスや過度なダイエットや偏食による食事制限などが原因で月経異常、生理不順を起こすこともあります。また、子宮筋腫や子宮内膜症などの生殖器に関連する病気、副腎や甲状腺などの内分泌の病気でも月経に影響するものがあります。

それぞれの対処法

更年期症状であるかを調べる

まず、更年期症状であるのか、そうでないのかの見極めがとても重要です。更年期かどうかを知るためには、該当年齢であること、そしてエストロゲンや下垂体から分泌されるゴナドトロピン(LH、FSH)などのホルモン検査でわかります。
また、ストレスや他の病気などが原因であることも考えられるため、病院に受診した際には、生活習慣や仕事、家庭のこと、持病や家族歴、その他気になる症状があれば一緒に相談しましょう。月経異常や生理不順に加え、更年期症状もある場合には、さまざまな治療法があります。

ホルモン補充療法(HRT)

更年期症状は主にエストロゲンの急激な減少によるものであり、ホルモン補充療法はこのエストロゲンを少量補うことで、身体的・精神的な症状を改善する治療法です。特にほてりや発汗、動悸、不眠、気分の落ち込みなどの不定愁訴と呼ばれる症状に有効ですが、その他の泌尿生殖器症状・骨粗しょう症などの症状にも有効です。ホルモン補充療法には内服薬や貼り薬、塗り薬などのタイプがあり、投与方法もさまざまあります。

漢方薬

漢方は全体的な心と体のバランスの乱れを回復させる働きがあり、不定愁訴のような複数の症状に対しての治療は漢方薬がもっとも得意とするところです。さまざまな症状がある更年期症状に対しては、当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸の「婦人科三大処方」と呼ばれる漢方を中心に症状に合わせた処方が行われます。
また、漢方医学では、独特の考え「気・血・水(き・けつ・すい)」から不調を探っていきます。

抗不安薬や睡眠薬

イライラや抑うつ、不眠などの精神神経症状が強い場合には、抗不安薬や睡眠薬などの対症療法を行います。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの新規抗うつ薬はほてりや発汗などの血管拡張などに関する症状を改善してくれことがわかっています。

その他の精神療法、心理療法

更年期症状を和らげるのは、薬物治療だけではありません。更年期症状のつらさや苦しさを女性外来や更年期外来、カウンセラーに聞いてもらうことも治療の一環です。不安や脅迫概念に対して、あるがまま受け入れていく森田療法、自分の思考や行動パターンを知り、セルフコントロールをしていく認知行動療法などの精神療法があります。
また、適度な運動や趣味の楽しいことをすることも心理療法です。なかでも、気分をリフレッシュ、落ち着かせてくれるアロマテラピーは手軽にできるセルフケアとしてもおすすめです。オイルでマッサージをしたり、お湯に垂らして入浴したりするのもいいでしょう。こうしたセルフケアもうまく取り入れてみてください。

まとめ:月経異常や生理不順などがあると、もしかしたら病気かもしれないと、最初は驚くこともあるかもしれません。しかし、女性の更年期特有の症状であることもあります。つらい症状が続く場合には無理をせず、専門機関へ受診し、担当の医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を選択していきましょう。

引用:

日本産婦人科医会
www.jaog.or.jp/qa/youth/qashishunki5/

参考:

・書籍:女性外来のお医者さんが教える「更年期の苦痛」のやわらげ方

・日本産婦人科学会更年期障害
www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14

・月経異常の概要
www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E7%95%B0%E5%B8%B8%E3%81%A8%E7%95%B0%E5%B8%B8%E3%81%AA%E6%80%A7%E5%99%A8%E5%87%BA%E8%A1%80%EF%BC%88%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E5%87%BA%E8%A1%80%EF%BC%89/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E7%95%B0%E5%B8%B8%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

・ホルモン補充療法
www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/HRT201603.pdf

・江東区医師会区民公開講座
koto-med.or.jp/healthtopics/2229.html

・更年期障害漢方のツムラ
www.tsumura.co.jp/kampo/nayami/kounenkishougai01.html

この記事を監修している先生

時計台記念病院

藤井美穂先生

社会医療法人社団 カレスサッポロ 時計台記念病院
院長・女性診療科部長  藤井 美穂 MD・PhD

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