更年期にドライアイが出たら?
症状と原因、対処方法

皮膚・分泌系の症状
21/03/22
更年期にドライアイが出たら?<br />症状と原因、対処方法

ドライアイになると「目がゴロゴロとして、乾いた感じがある」「視界がかすみ、ものがよく見えない」「目の疲れが出るようになった」などの症状が目立つようになります。ドライアイには眼科での治療が必要ですが、更年期症状との関係性が見られる場合は、更年期に注目した治療も欠かせません。

今回は、ドライアイの症状や原因、治療法について、更年期症状と関連付ける形で解説していきます。

ドライアイの症状

ドライアイとは、涙の量の不足や量のバランスの崩れにより、涙が目の表面に十分にいきわたらなくなる状態です。これにより、目の渇きやものがかすんで見える異変、目がゴロゴロする感覚、目疲れなどの症状が出るようになります。

涙とは、例えば泣くときに出るものだと思われがちですが、実は目の表面を覆ったり目を守ったりするために必要不可欠なものです。その涙に支障が生じると、違和感や不快感だけでなく、日常生活を送ることが辛くなるケースもあります。

以下、それぞれの症状や起こりうる状況を詳しく見ていきましょう。

目の渇き

パソコンやスマートフォンの画面などを長時間見ることや、細かな作業に集中することで、目が乾いたような違和感を覚えるようになります。まばたきの回数の減少に応じて涙の量が減ることが原因です。

目の渇きは、目の表面や角膜、結膜の健康状態を脅かすリスクが高いため、楽観視せずに早めの対応を考える必要があります。

視界や目の違和感

目を通じてもの自体は見えていても、かすんでいて全体を把握しづらい状態です。涙の量が不安定になることから、ものの見え方にも異変があらわれてしまいます。

また、目がゴロゴロとする感覚を覚える方も多いです。涙の量が減少し、質にも影響が出ることが原因だとされています。

目疲れ

ドライアイが続くと目の状態を良好に保てなくなることから、目疲れが出やすくなります。目の表面が守られなくなるとさまざまなリスクが増えるため、目疲れが出てきたら一度眼科を受診しましょう。

ドライアイの原因

ドライアイの原因には、パソコンやスマートフォンの使い方、コンタクトレンズの使用、エアコンによる乾燥、高齢化などとの関連が考えられますが、女性の場合は更年期が原因になるケースもあります。

更年期による卵胞ホルモンの減少が原因

45歳から55歳にかけて起こる更年期は、卵巣ホルモンの機能が低下する時期です。それに応じ、20代から40代にかけてピーク状態であった『卵胞ホルモン(エストロゲン)』の分泌が減少し、目の表面が乾燥しやすくなります。卵胞ホルモンは目の潤いを維持する役割も担っているため、更年期によって分泌が減ると、目が受けるダメージも大きくなります。

更年期症状の悪化には注意しましょう

卵胞ホルモンは、女性の体の健康状態を支えるためには欠かせない女性ホルモンです。しかし、更年期によって卵胞ホルモンが不足すると、心身ともに多くの不調が出るようになります。症状の出方が年齢によって異なり、45歳前後の早い時期でホットフラッシュや冷え症、疲れや心の不調が出るのに対し、遅い時期では骨粗しょう症や脂質異常症、尿失禁などの身体的な不調が深刻化することも、更年期症状の特徴です。

更年期症状は多くの女性が経験するものとなりますが、「年齢だから仕方がない」「そのうち軽快する」と楽観視することは危険です。更年期の症状の程度には個人差があり、難なく乗り越える人も多ければ生活の質に支障が出る『更年期障害』にまで悪化する人も少なくありません。そのため、更年期症状が出始めたら1日でも早く医療機関を受診し、検査や治療を通じて症状に対応する必要があります。

更年期セルフチェック

現時点で起こっているドライアイと更年期症状との関係性を確かめる場合、ほかの更年期症状が出ていないかを振り返ってみることをおすすめします。

  • 顔のほてりや上半身ののぼせ、発汗が気になる
  • 腰や手足が冷えやすく、冷え性が目立つようになった
  • 息切れや動悸が出やすくなっている
  • 寝つきに苦労するようになり、睡眠の質も悪い
  • 怒りやすくなり、すぐにイライラしてしまう
  • くよくよと悩んだり落ち込んだりすることが増えた
  • 頭痛、めまい、吐き気がする
  • 以前よりも疲れやすくなった

以上の症状に心当たりがあるのなら、更年期症状がドライアイと関係している可能性が高いです。また症状が多ければ多いほど状態が深刻化し、更年期障害に発展するリスクが高いため、楽観視せずに早めの対応を考えましょう。

更年期によるドライアイへの対処方法

更年期を迎えてからドライアイの症状が目立っている場合、医療機関での専門的な治療が必要です。更年期外来や女性外来での治療に加え、眼科での治療も受けるようにしましょう。

更年期外来や女性外来の治療

更年期症状とドライアイの関連性が深く、ほかの更年期症状も見られるケースでは、更年期外来や女性外来での治療を受ける流れになります。更年期症状への主な治療法は、『ホルモン補充療法(HRT)』『漢方』の2種類です。

ホルモン補充療法では、卵巣機能の低下によって失われる卵胞ホルモンを、専用の薬剤で補うことを目的にした方法です。投薬のタイミングや期間、薬の種類は女性一人ひとりの症状や体質によって異なります。副作用が心配されるケースもありますが、即効性に優れていて幅広い症状に対応できる点がメリットです。治療費は症状によって変わりますが、月に1,000円から5,000円程度が相場となります。

漢方では、東洋医学の観点を活かして漢方薬を処方します。症状に対して薬を処方するというよりは、一人ひとりの体質や体型に合わせ、症状緩和に適した薬を提供することが特徴的です。ホルモン補充療法のような即効性はあまり期待できませんが、副作用のリスクが低く、体質改善ができる点がメリットです。

眼科での治療

眼科ではドライアイに対し、まず目の状態を確かめるための検査を行います。目の疾患の有無を調べる視力検査に加え、目の傷を探す顕微鏡検査、涙の質を調べる『BUT検査(BreakUpTime検査)』、涙の量を確かめる『シルマー検査』など、さまざまな検査を進めていきます。

眼科でのドライアイへの治療法としては、点眼液を使うケースが多いです。点眼液で効果が期待できない場合には、涙点を閉鎖して涙の流出を防ぐ『涙点プラグ』の治療を行います。

目に負担をかけない生活を意識

更年期外来や女性外来、眼科での治療はもちろん必要ですが、日常生活での目を守る努力も大切なポイントです。

部屋の湿度の調整やまばたき、ストレスをためない生活を心がけることで、ドライアイから目を守れるようになります。薬物治療を適切に続けながら、毎日の生活でもドライアイの原因を取り除きましょう。

更年期対策には、
医療保険の見直しもおすすめです

ドライアイに限らず、更年期は心身ともに不安定な状態になる時期です。日常生活のストレスや更年期障害を防ぐには、適切な治療を継続して受けることが必要不可欠でもあります。

金銭的な負担が原因で治療に躊躇してしまう場合には、医療保険の見直しを検討しましょう。治療費を少しでも軽減すると治療に対して肯定的になり、症状緩和がよりスムーズになります。体力的・精神的なストレスに加えて金銭的なストレスを抱えないことも、更年期を快適に過ごすためには非常に役立ってくれます。

前向きな気持ちで更年期治療に臨むためにも、ストレスなく治療を受けられる環境づくりの準備を始めましょう。

この記事を監修している先生

時計台記念病院

藤井美穂先生

社会医療法人社団 カレスサッポロ 時計台記念病院
院長・女性診療科部長  藤井 美穂 MD・PhD

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