男性更年期障害とは、その特徴と治療法

男性の更年期とは
21/06/16
男性更年期障害とは、その特徴と治療法

更年期障害と聞いて、女性特有のものであると感じる人は少なくないかもしれません。しかし、更年期は男性にも同様にしてあり、気づかないうちに自分の身に起きているにも関わらず、症状に悩んだり、放置して症状が悪化したりすることもあるようです。今回は男性更年期障害について、どのような特徴があるのか、その治療法について紹介していきます。

男性更年期障害と女性更年期障害との違い

健康診断の結果で引っかかったわけでもなく、だるさやほてりなどの不調が続く、あわせてED(勃起障害)の症状があると、男性更年期障害の可能性があります。更年期障害とは、性ホルモン分泌量の低下が原因となる自律神経失調症に似た症候群のことを指し、LOH症候群(late-onset hypogonadism)ともいわれています。男性ホルモン(テストステロン)は、骨格や筋肉などの身体作り、生殖機能や認知機能、血管機能にも関与し、健康を維持する大事な役割を担っています。

男性の更年期は女性の更年期のように閉経前後で急速に性ホルモン分泌が減少するわけではありません。40代の中年以降で、ゆるやかに性ホルモン分泌が減少します。そのため40代以降、いつでも男性更年期障害が起こり得るとされています。性ホルモン分泌が減る速さや時期は人それぞれ個人差が大きいです。

よくある症状は、だるさやほてり、発汗、関節痛、頻尿、性欲低下、ED(勃起障害)などの身体症状からイライラ、不安、意欲低下などの精神症状があげられます。男性ホルモンの低下が抑うつ感に繋がり、抑うつ状態にあると男性ホルモンが低下することがわかっています。また、男性更年期障害になると、肥満・メタボリックシンドローム、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病のリスクが高まります。最初は、「年齢のせいかな」と思い込んでしまうことも少なくありませんが、これらの症状から更年期障害の可能性があることを知ってください。

男性更年期障害の治療、予防

一般的な薬物治療など

男性の更年期障害の治療はさまざまですが、まずは生活習慣の見直し、症状に合わせて漢方薬やED治療薬、抗うつ薬などで治療を行うことが一般的です。男性ホルモンの低下が著しく、症状が強い場合には、テストステロン補充療法(TRT)を行うこともあります。これまでTRTと前立腺がんへの影響が心配されていましたが、現在ではほぼ否定されつつあり、前立腺がんがないか事前スクリーニングをし、定期的に検査をして経過をみていくことが多いです。また、TRTには経口薬、注射薬、外用薬などがあります。どの診療科にかかるかといえば、主に泌尿器科外来やメンズヘルス外来、男性更年期外来などで男性更年期障害を専門的に診療していことが多いため、受診の際には注意が必要です。

※TRTはART(アンドロゲン補充療法)と呼ばれる場合もあります。

生活習慣の見直し

男性ホルモンの低下や症状がそれほどない場合には、生活習慣の見直しで症状が改善するケースもあります。職場のストレスや睡眠、食事、運動などの習慣について、今一度見直してみましょう。特に男性更年期の可能性がある40代以降は仕事で責任ある仕事を任される、子どもの進学や親の介護などストレスを受けやすい時期かもしれません。それにより睡眠や食事が不規則になり、長期にわたって強いストレスを受け続けると、男性ホルモンの分泌にも影響が出てきます。また、適度なウォーキングなどの有酸素運動は、男性ホルモンの値を上昇する助けとなるため、日頃から軽い運動も心がけていくことが大切です。

早い段階で生活習慣病に気づく、ひとつのサイン

男性ホルモンの減少で起こる症状には、代表的なものでED(勃起障害)があります。珍しいことではありませんが、かつて精神的なものである、糖尿病などの生活習慣が悪化して起こるなどといわれてきました。近年では、血管の機能と深く関わりがあるといわれています。例えば、動脈硬化や血流があるくなることでEDが起こりやすくなるということです。そのため、EDは『最初に自覚する生活習慣病』であるとも考えられています。こうした症状を早い段階で気づき、対処できるといいでしょう。


男性更年期障害については、あまり聞きなれないこともあるかもしれません。他の人には知られたくない、年齢のせいと思い、放置してしまう方もいます。しかし、なかには症状が悪化、生活習慣病のリスクが高まることもあるため、疲労感やほてり、泌尿器・生殖機能の変化が気になる方は、一度専門の医療機関を受診、検査をしていただくと安心です。

男性更年期障害の精神的症状、うつ病との違い

なんだかやる気が起きない、疲れやすい、眠れないなどの症状があると、真っ先に考えるのは精神的な病気でしょう。うつ病の初期症状には同様の症状があります。しかし、男性更年期障害にも似たような症状があることを知っていますか。今回は男性更年期の精神的症状とうつ病との違い、その治療法についてご紹介していきます。

男性更年期に伴う症状とうつ病との違い

男性更年期障害(LOH症候群)は、40代以降に性ホルモンの分泌が徐々に低下することで起こる不調の総称です。主に身体のだるさやほてり感、不眠、性機能の低下、イライラや不安などの症状が起こり得ます。これらの症状が数日、一時的なものではなく、数週間にわたり続く、生活に影響が出ているものを更年期障害と呼びます。

男性更年期のはじまりともいえる40代半ばは、「中年の危機」とも呼ばれる時期で、社会的にも身体的にもある程度の安定性がありながらも、人生のターニングポイントを通過し、老いに向かうことを強く意識する時期でもあります。これまでも十分に危機をもたらす年代でしたが、近年の急速な社会変化や経済の停滞によって、より社会的な負荷がかかることにより、ストレス社会ともいわれる危機的状況が生まれています。この影響で、中高年の男性に自殺者が多いことも考えられます。

しかし、うつ病でも同様に気分の落ち込み、考えがまとまらない、意欲がなくなる、眠れないなどの自律神経失調症のような症状もあります。実際に更年期症状とうつ病をはっきりとした違いを自己判断することは難しいですが、受診をして性ホルモン値を調べる、ホルモン量が回復して症状が改善されれば更年期障害と判断することができます。うつ病の治療を受けていた方がなかなか症状の改善がみられず、男性更年期外来を受診したら性ホルモンの分泌が低下していて、治療を開始すると症状が改善したケースもあります。更年期の治療も数か月以上かかることがありますが、うつ病の場合にはすぐには治りにくく、かつ再発しやすいのが現状です。更年期もうつ病もどちらもストレスによる影響が大きいため、併用して医療機関にかかることもひとつの方法です。

更年期障害の受診や治療

抑うつ症状、意欲が湧かない、不眠などの精神的な症状がみられた場合、またはその他の更年期症状もある場合には、泌尿器科や更年期外来、メンズヘルス外来などの受診をして、問診・診察・検査を受けます。そこで更年期症状がどれほど当てはまるか、血液検査では性ホルモン値などを調べ、その他全身の状態を調べることで男性更年期障害の診断をします。もし、性ホルモン値の低下がない、更年期症状が当てはまらない場合には、うつ病や他の病気としての治療がはじまることになります。

男性更年期障害のように、全身の症状がある場合には、補助療法として漢方治療を行います。頭痛やほてりなどの身体症状から、イライラ、不安が強い場合にも漢方が適しています。また、これらの処方でも改善されない場合や性ホルモン値がかなり低い場合には、男性ホルモン補充療法の適応です。治療期間は個人差が大きいですが、主に2~4週間に一回ほどのペースで通院してもらい経過を観察し、2~3か月から半年の時点で症状の改善度、副作用の有無、患者さんの希望などを考えた上で継続するかを判断します。半年で症状が改善された方から、数年継続している方もいます。精神的症状は身体的症状や病気と比べて、何を判断基準として治ったと判断するかは難しいところです。ホルモン補充療法をしなくても症状が落ち着いている、生活上で問題を感じなくなったといえる状態になれば、治療を終えて、経過観察することはあります。

また、漢方や薬の治療法だけではなく、生活習慣の見直しも大事なポイントです。男性ホルモンの低下にはストレスなどの影響もあり、食事や適度な運動、睡眠の見直しを行うことで、男性ホルモンの低下を防ぐことができます。また男性ホルモンの低下は糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病のリスクが高まるため、治療と併せて意識していきましょう。


男性更年期障害の精神的な症状とうつ病は似ているということを、はじめて知った方も多いかもしれません。また、ストレスなどの影響で相互的に関係していることも実はあまり知られていません。「もしかしたら男性更年期かも」と知っているだけでも違います。自分の症状がどちらのものなのか、またはほかの病気の可能性もあるのか、個人ではなかなかわかりづらいこともあり、専門の医療機関に受診をしてよく相談しましょう。

男性更年期障害は何科に受診をすればいいのか、その検査と治療方法とは

男性更年期障害といわれても、まだ一般的には聞き慣れないものでしょうか。他の人には体調のことを相談しにくい、歳のせいだろうと思いがちですが、更年期障害をそのまま放っておくと他の病気のリスクが高まることがわかっています。しかし、更年期障害かもしれないとなったときに、実際にどのように受診をして検査、治療をするのか不安があるかもしれません。今回は更年期障害の受診、検査や治療について、ご紹介していきます。

男性更年期障害の検査、診療科

男性更年期障害とは、40歳以降で男性ホルモンが減少したことによる不調のことをさします。だるさやほてり、気分の不安定、ED(勃起障害)などの症状があります。これらは「歳のせいかな」と思われて放置されやすいですが、そのままにしていると、症状が悪化する、別の病気の引き金になることも考えられます。そのため、受診をして検査をして調べることがまず一歩となります。主に男性更年期障害に対応している泌尿器科や男性更年期外来、メンズヘルス外来などで専門的に行っています。

検査には問診と診察、採血検査などがあります。問診ではAMS調査票と呼ばれる、最近の症状や生活についての質問に答えるものを使用します。合計点が26点以下は正常、27~36点は軽度の症状、37~49点は中等度の症状、50点以上なら要治療と判断されます。また各項目で3点以上が目立つ場合も注意が必要です。インターネットからでも活用できますが、あくまで一つの指標として使います。血液検査では肝機能や腎機能、前立腺特異検査(PSA)、性ホルモン値(テストステロン)などを調べます。他の病気の可能性を排除しつつ、男性更年期障害の診断をするためです。これらの検査は、初回は一部自費診療となり、検査自体は30分ほどで終わります。検査のために必要な準備としては、正確なホルモン値を調べるために、過剰なストレスがかかるようなことは控えましょう。

また、現在は更年期症状で困っているわけではなくても、定期的にチェックしたいという人には、男性更年期ドックという健康診断もあります。男性更年期無料相談を行なっている施設もあるため、これは男性更年期の症状なのかと不安な場合は、相談してから受診を考えてみてもいいでしょう。

男性更年期障害の治療

男性更年期障害の治療は、主に漢方や男性ホルモン補充療法などが一般的です。対象療法として抗うつ薬や鎮痛薬を出すケースもありますが、だるさのような全身の症状がみられることが多いため、漢方で全身の血の巡りに作用するようなもので対応することがあります。そして性ホルモン値がそれほど低くなく、精神的な症状がある場合には、心理カウンセリングやメンタルクリニックを紹介することもあります。

男性ホルモン補充療法は症状の具合や本人の持病、性ホルモン値によってではありますが、フリーテストステロンが8.5未満で適用、8.5以上11.8未満で症状によって適用、11.8以上は適用されません。男性ホルモン治療は注射薬で行うものが主流です。通常2~4週間毎に注射を行います。海外では飲み薬や塗り薬、貼り薬などもありますが、日本では承認されていないものがあります。クリニックによって取り扱っている薬が違うため、主治医とよく相談しましょう。

前立腺がんがある、過去に既往歴がある人は要注意です。男性ホルモン補充療法で腫瘍の悪化が否定できないことと、事前の検査で前立腺特異検査(SPA)をするのはこのためです。また、睡眠時無呼吸症候群がある方も注意が必要です。男性ホルモン補充療法で症状が悪化するリスクがあります。場合によっては、マウスピースやCPAPなどの呼吸を補助する機器を使うなどして対応します。

薬に頼らずに生活習慣の見直しから

薬に頼らず、生活習慣を見直すことからでも変化がみられることもあります。そのために適度な運動が大事です。有酸素運動は内臓脂肪を燃焼させることで、男性ホルモンの分解が減少することがわかっています。過度な負荷をかけすぎない筋肉トレーニングは男性ホルモンのいい循環を生み出します。そして、ストレスをためることで脳の視床下部の機能が低下し、男性ホルモンの分泌がうまくいかなくなるため、ストレスを受けても気分転換をして、ため込みすぎないようにすることが大切です。これらが男性ホルモンの分泌を減少させない予防法です。


男性更年期障害では、その症状の原因がはっきりとしないために、どこにかかったらいいのか、どのような検査をして治療をするのかがわかりにくいかもしれません。しかし、今では専門に開いている外来やクリニックなども多くあり、これまでより受診の敷居が低くなってきています。歳のせいかなと思ったとき、そのまま我慢して放置するのではなく、男性更年期障害かも、受診してみようかなという選択肢も持ってほしいです。

参考URL

男性更年期・EDをらくらく克服する方法

www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71

www.nippon-shinyaku.co.jp/healthy/male_urinaryorgans/male_menopause.php

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www.tsukuba-urology.com/patient/disease/male/

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www.ishin-kai.or.jp/dock/maledock

male-urology.jp/male_menopause/

この記事を監修している先生

代官山パークサイドクリニック

岡宮裕先生

代官山パークサイドクリニック院長

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