更年期にうつ状態になったら?
原因と対処法

精神神経系の症状
20/12/25
更年期にうつ状態になったら?<br />原因と対処法

「45歳を過ぎてから、気分の落ち込みがよく起こるようになった」「くよくよとしてしまい、物事を前向きに考えられない」「何に対してもやる気が出ない」、などの心の不調が出る場合、更年期で抑うつになっている可能性が高いです。
更年期は45歳以降の女性に必ずと言っていいほど起こる症状ではあるものの、適切な治療やケアを受けていれば症状を緩和することができます。

今回は、更年期による抑うつとその原因、医療機関での治療についてご説明します。

更年期には抑うつが出やすくなる

更年期とは、45歳から55歳にかけての女性に起こる、ホルモンバランスの変化があらわれる時期のことです。
女性の健康を支える女性ホルモンの分泌が減少し、心身ともに不調が増えていきます。
閉経を迎えてから気分の落ち込みや憂鬱、無気力感などが見られる場合、更年期による抑うつが起こっていると考えられます。

更年期による抑うつでは、一般的なうつ病のように、日常生活に大きな影響が出るほどに症状が悪化することはあまりありません。
しかし、ご自分でもおかしいと思うまでに気分の落ち込みや憂鬱、無気力感が続くのであれば、更年期による抑うつが出ていると捉え、それに合わせた対応が必要になります。

更年期うつ病にも注意しましょう

うつ状態とは、環境の変化や自律神経のバランスの崩れ、身体的なストレスによって起こる、心のエネルギーが不足してしまう状態のことです。
「いつでもきちんとしていなければ」という完璧主義からある程度離れることや、休息や気分転換、適度な運動などによって状態が緩和されます。

しかし、

  • 一日中、何事にもやる気が起きない
  • 感情がわかず、何に対しても心が動かない
  • 食欲がなく、不眠が続いている
  • 自分のことを責め続けてしまう
  • 集中力がなくなっている
  • 生きる気力を失っている

 

などの状態に心当たりがある場合、抑うつ状態ではなく『更年期うつ病』になっている可能性があります。
以上のような心の不調が見られたら、女性外来や精神科で診察を受け、必要な治療を始めましょう。

更年期に抑うつが起こる原因

更年期に抑うつが出る原因は、女性ホルモン『卵胞ホルモン(エストロゲン)』の減少によるセロトニン不足だと考えられます。

45歳から55歳にかけての更年期は、卵巣機能の低下により、女性ホルモンの分泌が減少する時期です。
更年期の前には少量の出血やだらだらと出血が起こる『不正出血』があり、やがて閉経を迎えます。閉経を迎えても女性ホルモンの分泌は続きますが、分泌量が以前と比べて大幅に減少するため、その影響を受けて心身ともに不調が増える『更年期症状』があらわれます。
数ある更年期症状の一つが、抑うつです。

更年期によって卵胞ホルモンの分泌が低下すると、脳内物質『セロトニン』の分泌にも影響が出るようになります。
セロトニンは俗に『幸せホルモン』とも呼ばれ、心の健康状態を維持するのに大きな役割を持っていることから、ここでセロトニンが減少すると抑うつの症状につながります。

更年期に出やすいほかの症状

気分の落ち込みや憂鬱、無気力感を更年期症状と関連付けるには、ほかの症状が出ていないか確認することも必要です。
更年期初期に出やすい症状と照らし合わせ、現在起こっていると抑うつが更年期症状と関わっているか、セルフ診断をしてみましょう。

ホットフラッシュ、発汗

涼しい場所にいても顔や首回りが厚く感じる場合、更年期初期特有の症状『ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)』が出ていると考えられます。
場所や時間にかかわらず大量の汗が噴き出すことも、更年期初期に起こりやすい症状です。
このような症状は、卵胞ホルモンの分泌量が急激に減ることで脳の視床下部がパニック状態になり、自律神経の調節機能がダメージを受けるために起こります。

めまい、頭痛

ぐるぐる回っている感覚がある『回転性めまい』、体が浮いているような感覚がある『浮遊性めまい』、立ち眩みのようなめまいや、脳腫瘍やくも膜下出血などの異常がなくても頭痛が続く場合にも、更年期症状の可能性が考えられます。
めまいでは自律神経のバランスが崩れることが、頭痛では血液中のセロトニンの減少によって血管の拡張が起こることが原因です。
そして両方とも、卵胞ホルモンの減少が関係しています

不眠

寝つきが悪くなる『入眠障害』、眠りが浅くなる『熟眠障害』、途中で目が覚める『中途・早朝覚醒』などがあります。
ホットフラッシュや発汗によって眠れなくなるケースも多いです。

思考力低下、イライラ感、不安

自律神経が乱れるために思考力が低下するケースや、脳内ホルモンが不安定になってイライラ感が増すケース、常に不安に悩まされるケースもあります。
卵胞ホルモンにはセロトニンや脳内ホルモンを整える機能があり、減少するにつれてコントロールが難しくなるためです。

冷え性や疲労感、動悸も更年期症状です

上の症状のほかにも、手足の冷えや疲労感、脈拍の速さや息切れが目立つ『動悸』が出ることもあります。卵胞ホルモンは女性の体の健康状態を支える役割があるため、減少につれて不調が多くなっていきます。

抑うつに加えてこれらの症状にも悩んでいる場合は、更年期との関係性を考え、早めかつ適切な治療を受けることがとても大事です

抑うつ症状が出たときの対処法

更年期に抑うつ症状が出た場合、医療機関での専門的な治療が必要になります。

医療機関での治療

『ホルモン補充療法(HR2)』『向精神薬』などに加え、精神療法が選択されるケースが多いです。

ホルモン補充療法

更年期によって失われる女性ホルモンを、薬によって補充し、症状の緩和を目指します。薬の種類や手段、投薬の期間やタイミングは人によって異なるケースがほとんどです。
治療を受け始めるころには副作用が出ることがあるものの、慣れていくと軽快します。治療費の相場は1か月で1,000円から5,000円程度です。

向精神薬

ホルモン補充療法で改善が期待できない場合は、向精神薬で症状に対応します。抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などの薬を処方し、更年期症状による抗うつを和らげていきます。
永遠に薬を服用するわけではなく、症状が改善されるまで治療を受けるケースが多いです。

精神療法

『森田療法』『認知行動療法』『自律訓練法』『家族療法』など、薬ではなく行動や認知を変えることで、抗うつ状態を改善します。悩みや苦しさに対話や訓練で向き合い、捉え方を前向きに変えていくことが目的です。

抑うつ症状が出ていたら、医療機関を受診しましょう

更年期による抑うつは、専門家による治療を受けていれば十分に緩和できます。
また、ご自分では単なる気分の落ち込みだと思っていても、更年期うつ病や本格的なうつ病など、病気が関係しているケースも珍しくありません。
ご自分の症状にきちんと向き合い、生活へのダメージを抑えるためにも、医療機関で検査を受けて原因を知り、必要な治療を始めるようにしましょう。

必要に応じて医療保険の見直しも

以上、更年期に起こる抑うつや原因、医療機関での治療法についてお話ししました。
医療機関で専門的な治療を受けることで、抑うつの症状が緩和され、生活の質を下げずに快適な毎日を送れるようになります。

医療機関での治療による金銭的な負担が気になる場合は、医療保険の見直しも視野に入れるといいでしょう。金銭的な負担を軽減することで新たなストレスを避けられるようになり、治療や症状改善に向けて気持ちが前向きになります。

治療を受けるためにストレスの少ない環境を整え、より健康的で穏やかな更年期を迎えられるよう、しっかりと準備しておきましょう。

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